釜石市の公開資料19,796件を積み上げた読書机のイメージ。カードに 釜石市の15年 118の施策の約束
三陸を知る 約45分

📚 釜石市の15年を、全部読みます

岩手県釜石市の公開資料19,796件を機械で集め、復興まちづくり基本計画118施策・災害公営住宅・新市庁舎・スタジアムの約束を原典まで戻して確かめた記録。守られた約束も、まだ終わっていない約束も、同じ物差しで並べています。

この記録の見取り図

たどった公開資料19,796件(公開資料の目録)

  1. 1数字の入口 ── 39,574人が28,012人になった
  2. 2亡くなった人の数が、資料によって三つある
  3. 32011年12月23日、118の施策と「35,000人」
  4. 4118の進捗は、2019年2月で更新が止まっている
  5. 5市役所そのものが、いちばん長く遅れている
  6. 6鵜住居 ──「回避可能であった」と書かれた報告書
  7. 7スタジアム ── 16,000席は6,000席に戻り、維持費は寄付でまかなわれている
  8. 81,035の事業者のうち、376が休業・廃業した
  9. 9数字の目標は、実績と並べると形が見える
  10. 10釜石だけが、震災当日の議会会議録を読める町だった
  11. 約束の台帳
  12. 残っていない記録の地図
  13. まだ読めていないもの
  14. まとめ
  15. 関連記事

上から順に並んでいます。気になる章から読んで大丈夫です。

この記事で分かること

  • 釜石市が15年のあいだに公表した約束を、公開資料からどこまで追えるか
  • 人口、犠牲者数、118施策、新市庁舎などの数字を、定義と出典に戻って読む方法
  • 確認できた約束と、まだ公表物にたどり着けていない約束の境界

この記事は「釜石市はこう復興しました」という記事ではない。釜石市が15年のあいだに公表した約束が、いま何件どうなっているのかを、公開資料だけでどこまで追えるかを実際にやってみた記録である。

先に結論の形を言う。この記事の主役は評価ではなく並びだ。「2020年度 → 2022年度 → 2023年度 → 2026年度」。「35,000人 → 32,078人 → 28,012人」。「20,000トン → 6,295トン」。並びが自分で語ることに、書き手が言葉を足す必要はない。

この記事の作り方 ── 読む人への約束

読めた範囲(3点セット)

  • 文書19,796点。釜石市公式サイトのsitemap 9本・HTML 4,110ページを全取得し(4,109件がHTTP200・1件が404)、各ページ本文から添付PDF 14,225本を全数HTTPで確認した(14,191本が200・404が28・403が3・接続不能が3)。これに岩手県1,510件、市議会会議録システム140会議、会計検査院61件、復興庁27件、その他61件を加えた目録が19,796行である。
  • のべ371ページ相当。この記事のために本文まで開いてページを数えたPDFは10点、合計371ページ。ほかに市・県・国のWebページと、調査担当(Sol)が出典として開いた一次資料を合わせ、本文まで開いた資料は88件である。
  • 会議録140回分のうち13回分。市議会会議録は2010年2月の臨時会から2026年3月の定例会まで140会議(定例会65・臨時会43・委員会32)が公開されており、そのうち13回分を本文まで読んだ。

未読

19,796点のうち本文まで開いたのは88件。残る19,708点は目録に載っているだけで、中身は読んでいない。目録の「取得済」はそのURLが応答したという意味であって、読破した蔵書という意味ではない。この記事は蔵書自慢ではなく、地図の読み方を書くものである。読めていないものは「まだ読めていないもの」の節に件数つきで書く。

基準日は2026年8月17日

更新されるページはこの日の状態として扱う。この記事の全ての「見つからなかった」は、上の範囲の内側でだけ成立する。

母集団7種の分母は、着手時に登録して公開している(母集団の事前登録)。範囲をあとから決めれば「無い」はいくらでも作れるので、先に決めて公開しておく。


1. 数字の入口 ── 39,574人が28,012人になった

総人口: 39,574人(2010年)→ 36,802人(2015年)→ 32,078人(2020年)→ 28,012人(2025年)。15年で11,562人、29.22%減った。 減り方は -7.00% → -12.84% → -12.68%で、最初の5年がいちばん緩く、そのあと加速して高止まりしている。

国勢調査だけを並べる。

総人口世帯数前回比
2010年(平成22年)39,574人18,543人21,031人16,094世帯
2015年(平成27年)36,802人18,105人18,697人16,860世帯-2,772人(-7.0046%)
2020年(令和2年・組替値)32,078人14,725世帯-4,724人(-12.8363%)
2025年(令和7年・速報集計)28,012人13,442人14,570人13,619世帯-4,066人(-12.67535%)

書き添えておかないと嘘になる注記が3つある。

ひとつ。2025年は速報集計である。人口等基本集計(確定値)が出たら差し替えが要る。

ふたつ。2020年は2025年10月1日の市区町村境界に基づく「組替」値で、2020年当時の公表値と一致するかは確認していない。増減率のうち2015年(-7.0046%)と2025年(-12.67535%)は公表値の転記だが、2020年(-12.8363%)だけは公表がないためこちらで計算した。

みっつ。2010年から2015年にかけて、人口は2,772人減ったのに世帯は766世帯増えている。同じ期間に国勢調査の「施設等の世帯」が24から812へ、788増えた。仮設住宅や施設の扱いが関係している可能性はあるが、原表の定義まで確認していないので、ここでは並べるだけにする。

完成予定は4回動いた。人口は15年で11,562人減った 工事現場の仮囲いに掛かった木の工程表の板。十五年ぶんの目盛りの上に、国勢調査が測った四つの人口と、四度打ち直された新市庁舎の完成予定の札が並び、予定の札だけが右へずれていくのを読み分ける。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 完成予定は4回動いた。 人口は15年で11,562人減った 期間: 2011年3月11日〜2026年8月17日 | 単位: 人・年度 | 母数: 国勢調査・市の公表資料 | 基準日: 2026年8月17日 釜石市の15年を、公表された数だけで確かめる人へ 国勢調査(2010年は震災前) 2010年 39,574人 2015年 36,802人 2020年 32,078人 2025年 28,012人 新市庁舎の完成予定 2018年2月に言われた完成予定 → 2020年度 2019年2月に言われた完成予定 → 2022年度 2021年9月に言われた完成予定 → 2023年度概成 2026年3月に言われた竣工 → 2026年度 公表の出来事 2014年1月 広報かまいしのバックナンバーはここから。これより前は現行公開範囲に無い 2019年2月 118施策の進捗公表(完了24・実施中94)。以後この範囲では見つからない 2021年3月末 仮設住宅入居0世帯・仮設店舗0事業者 2025年の人口は速報集計。確定値が出たら差し替える 出典: 国勢調査/釜石市の公表資料。確認した範囲での記載
工事現場の仮囲いに掛かった木の工程表の板|十五年ぶんの目盛りの上に、国勢調査が測った四つの人口と、四度打ち直された新市庁舎の完成予定の札が並び、人口の点が下がる一方で予定の札だけが右へずれていくのを読み分ける図

2. 亡くなった人の数が、資料によって三つある

釜石市の犠牲者の数: 888人・994人・1,064人。三つとも市または県が公表した数で、三つとも定義が違う。

同じ市の同じ災害について、公表された数字が三つある。どれが正しいかをここでは決めない。決められるだけの根拠を、こちらが持っていないからである。

公表元・資料数字資料に書かれた定義
岩手県復興防災部防災課「東北地方太平洋沖地震に係る人的被害・建物被害状況一覧」(2026年7月31日現在)直接死888人・関連死106人・計994人、行方不明者152人直接死は県警調べ、関連死は県担当課調べ
釜石市「令和7年度教育要覧 第1章 釜石市の概況」(2025年8月8日公開)死亡者数888人(令和2年1月1日現在・身元不明5人を含む)、行方不明者数152人「死亡者数については、釜石市で遺体収容されたもの」
釜石市「復興交付金事業計画の総合的な実績に関する評価」(2024年1月)死亡者数1,064人(行方不明者152人、関連死認定者106人含む)定義の但し書きなし

県の表と市の教育要覧は、どちらも888人という同じ数を書いているが、県は「直接死」、市は「釜石市で遺体収容されたもの」と説明している。市の評価様式の1,064人は、行方不明者152人と関連死106人を内数に含むと書かれている。この三つがどう対応するのかを説明した文書は、確認した範囲では見つからなかった。

数え方が複数あること自体は、大槌町でも同じだった(大槌町の記事の第5章)。この地域の15年を数字で読むとき、最初に確かめるべきなのは数の大小ではなく、その数が何を数えたものかである。

市の震災誌「撓まず屈せず」(2023年10月)285ページには、鵜住居の「釜石祈りのパーク」について「犠牲者1,064人の内1,002人の芳名を刻んだ芳名板や献花台からなる慰霊碑を中央に配置し」と書かれている。慰霊碑が置かれた基準の数は1,064人である。

家屋の被害は、県の表で家屋倒壊数3,656棟。市の評価様式では「住家数16,182戸のうち4,704戸が被災(29%)」で、内訳は全壊2,957戸・大規模半壊395戸・半壊304戸・一部損壊1,048戸と書かれている。負傷者数は、県の表で釜石市の欄が「不明」のままである(2026年7月31日現在)。

同じ町の、同じ災害。公表された数が三つある 検寸室の作業台に立てかけられた三本の木の物差し。八百八十八・九百九十四・千六十四という三つの公表値が、それぞれ何を数えた数なのかを定義札で読み分ける。
検寸室の作業台に立てかけられた三本の木の物差し|同じ町の同じ災害の犠牲者数が、八百八十八・九百九十四・千六十四と三通りに公表されていることを長さの違いで示し、それぞれの数が何を数えたものかを定義の札で読み分ける図

3. 2011年12月23日、118の施策と「35,000人」

計画期間: 2011年度から10年間。前期3年・中期3年・後期4年。掲げた将来像は「計画期間の後半では、35,000人規模の人口が維持されています」。

釜石市復興まちづくり基本計画は2011年12月23日に策定された。表紙には「東日本大震災からの復興 撓まず屈せず」とある。計画期間について、本編3ページはこう書いている。

平成23(2011)年度を初年度とし、向こう10 年間を計画期間として定めます。(中略)前期3 年、中期6 年のそれぞれに中間目標を定め、一日も早く「復興宣言」を出せるよう、計画した施策や事業を適宜前倒し、可能なものから実施します。

そして「目指すべき釜石の将来像」の最後の一文が、この計画のいちばん大きな数字である。

このような取組の結果、計画期間の後半では、35,000 人規模の人口が維持されています。

計画期間の後半は2017年度から2020年度にあたる。2020年の国勢調査は32,078人、2025年は28,012人だった。

この一文は、§0-Bの定義でいえば「約束」ではない。主体・行為・対象は読み取れるが、誰が何をすれば達成なのかという完了条件がないため、この記事では「将来像(目標)」として扱い、約束の台帳の分母には入れない。同じ理由で「復興宣言」も約束ではなく方針表明として扱う。ただしひとつだけ観測を書いておく。目録19,796行の表題を検索した範囲と、Web検索した範囲では、釜石市が「復興宣言」を出したと書いた文書は見つからなかった。(※要確認。この行は、新しい一次資料で確認できた時点で書き換わる)

人口については、市はこのあと別系統の数字も公表している。2015年の「釜石の実像(釜石市人口ビジョン)」は、2040年の総人口をパターン3で27,094人と置いた。2020年の第2期戦略は「2040年に27,000人という将来展望を維持しつつ、取組を強化していくこととします」と書いた。2025年4月の第3期戦略に載る表では、2040年が20,045人になっている。

2040年の姿: 27,094人(2015年)→ 27,000人(2020年)→ 20,045人(2025年)。10年で7,000人ぶん下へ動いた。

4. 118の進捗は、2019年2月で更新が止まっている

118施策の進捗公表: 2018年2月時点(実施中97・完了21)→ 2019年2月時点(未実施0・実施中94・完了24)→ 以後、確認した範囲では公表が見つからない。計画期間は2020年度末で終わっている。

2019年2月8日に市が公表した「釜石市復興まちづくり基本計画の進捗について」は、A4で1枚の文書である。そこにはこう書かれている。

2 平成29 年度末の復興まちづくり基本計画118 の実施施策の進捗 (1)未実施 0 施策(前年度 0 施策) (2)実施中 94 施策(前年度97 施策) (3)完了済み 24 施策(前年度21 施策)

同じ日に公表された別紙「実施施策の進捗」(全12ページ)には、118の施策が1件ずつ、着手年度・状態・所管課つきで並んでいる。第1号は「高台移転等の面整備」で、状態欄にはこう書かれている。

釜石市の15年を、全部読みますの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

宅地造成に関し、平成30年9月末現在、約92%を完了。残る両石地区、片岸地区、鵜住居地区及び東部地区については、平成30年度末までに完了予定。

この2枚が、確認した範囲では、118施策の進捗を数で示した最後の公表物である。目録19,796行のうち表題に「復興まちづくり基本計画」を含む行は21行あり、そのうち進捗を示すものは2019年2月8日と2019年2月12日に公表された同一内容の2件だけだった。計画期間は2020年度末に終わっている。計画期間の終わりの時点で118施策が最終的にどうなったかを数で示した文書は、この範囲では見つからなかった。

近いものは別の枠組みで公表されている。2024年1月の「復興交付金事業計画の総合的な実績に関する評価」がそれで、こちらは復興交付金という制度の枠組みで172事業(うち17事業廃止)・事業費総額1,879.77億円を総括している。118施策とは分母が違うので、片方をもう片方の答えとして読むことはできない。

その評価様式には、次の一行がある。

○ 復興交付金事業計画の実施に当たり、県又は市町村において改善が可能であった点   特になし。

この行は、新しい一次資料で118施策の最終状態が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 目録19,796行・本文まで開いた資料88件、基準日2026年8月17日)

118施策の進捗公表を並べる
  1. 実施中97・完了21
  2. 未実施0・実施中94・完了24
  3. 以後確認した範囲では公表が見つからない

5. 市役所そのものが、いちばん長く遅れている

新市庁舎の完成予定: 2020年度(2018年2月の市政方針)→ 2022年度(2019年2月の進捗表)→ 2023年度概成(2021年9月の実施設計完了時)→ 2026年度竣工(2026年3月の予算概要)。当初から6年後ろへ動いた。 2026年8月現在、市役所は複数の庁舎に分かれたままである。

2018年2月26日の市政方針で、市長はこう述べている。

フロントプロジェクト2の新市庁舎建設につきましては、天神町の旧釜石小学校跡地等を建設予定地として、平成32(2020)年度の完成を目指して準備を進めてまいります。

1年後の2019年2月、118施策の進捗表では扱いが変わっている。「4 平成33(2021)年度以降継続されるハード事業」として挙げられたのは1件だけで、それが「71 市庁舎の整備」(平成34=2022年度完了予定)だった。118施策のうち、計画期間の外まで持ち越すと明記された施策は、市庁舎ただ一つである。

2021年9月、実施設計の完了に合わせて公表された工程表には「新庁舎建設 実施設計/建設工事(移転含)」の行に「R5概成予定」とある。同じ日に公表された事業費の資料は、基本計画時の概算「約58億98百万円」が実施設計積算後に「約62億40百万円」となり、検討中のシステム類3億円を加えた総計を「約65億40百万円」と書いている。原文の単位は「◯億◯◯百万円」で、同じ物差しに直すと約58.98億円→約62.40億円、システム類3億円を含む総計が約65.40億円である。増加の理由は「基本計画時より床面積が増加したことや敷地の嵩上げ、鉄鋼資材の高騰等」と記されている。

2022年3月29日、岩手県が「最大クラスの津波浸水想定」を公表した。市はその後、次のように書いたページを出している。

新市庁舎建設計画は、令和4(2022)年3月29日に岩手県において公表した「最大クラスの津波浸水想定」結果の内容を詳細に確認したうえで、市としての考えを取りまとめてまいります。

工事の公告は2023年12月、建築主体工事は再度公告入札を経ている。2024年9月からは毎月の進捗ページが公開され、2026年3月分(4月2日更新)では「床下に電気配線を通すことが出来るOA床の工事が進んでいます」「議場天井の内装工事」「庁舎棟屋上に太陽光パネルが設置」と報告されている。この毎月の進捗ページ3件を開いた範囲では、完成予定日や供用開始時期を書いた記述は見つからなかった。

竣工時期を書いた一次資料は、予算のほうにあった。2026年3月に公表された令和8年度当初予算の概要にこうある。

一般会計予算は215.6億円、前年度比31.6億円減、12.8%減、うち令和8(2026)年度竣工の新庁舎建設事業は前年度比33.6億円減の10.7億円を計上

同じ資料は、市債残高218.4億円のうち新庁舎建設事業の借入れが「交付税措置が手厚い緊急防災・減災事業債56.9億円(交付税措置率70%)」であること、令和8年度予算に「市庁舎解体工事(第5庁舎)103,928千円」(約1億393万円)が計上されていることも書いている。建てる話と、いまの庁舎を解体する話が、同じ年度の予算書に並んでいる。

この行は、新しい一次資料で供用開始日が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 市の新庁舎建設カテゴリの記事一覧と進捗ページ3件・令和8年度当初予算、基準日2026年8月17日)

6. 鵜住居 ──「回避可能であった」と書かれた報告書

防災センターの人数: 市の当初推定「100人前後」(2011年8月)→ 遺族連絡会「200人以上」→ 名簿整理で避難者248名(2012年12月)→ 241名(2014年1月)→ 報告書の結論「200名を越える多くの住民が津波の犠牲になったと推測される」。確認した範囲では、数を確定した資料は見つかっていない。

2010年2月1日に開所した鉄筋2階建ての釜石市鵜住居地区防災センターに、震災当日、多数の住民が避難した。2014年3月の被災調査報告書は、冒頭でこう書いている。

釜石市の15年を、全部読みますの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

津波は2階天井付近に達し、津波が引いた後、内部から34 人の生存者が救出され、69 人が遺体で収容された。

同じ報告書の17ページには、遺族連絡会が整理した名簿の数が載る。「平成24(2012)年12 月5日現在、避難者数248 名(生存者34 名を含む)」、そして「平成26(2014)年1月17 日現在、避難者数は241 名(生存者34 名を含む)と推計されている」。19ページは、その先をこう書いて止めている。

結局、避難者数を確定できる情報は得られていない状況にある。

調査委員会は2013年8月2日に中間報告書を提出し、報告書の「おわりに」はその内容を「事態は回避可能であった、市の行政責任は重い」と要約している。

同じ報告書には、対照的な数字も並んでいる。

釜石市の小中学生約2,900 名のうち犠牲者は5名にとどまり、防災教育の役割がいかに重要かが示された。

報告書は最後に、調査委員会委員長の名前で5つの提案を置いた。提案は市の約束ではないので、約束の台帳とは別の表にする。市の資料で履行の手がかりが確認できたものと、確認できなかったものを、同じ物差しで並べる。

#提案(2014年3月・報告書「防災対策の提案」)市の資料で確認できたこと状態
1住民避難に特化した避難訓練の実施(対象は震災の浸水域すべて・定期実施)震災誌282ページ「平成28(2016)年7月20 日9時(平日)、同11 月5日13 時(休日)、平成29(2017)年9月1日9時(平日)に3回の住民避難を主とした避難訓練を実施した」一部の実施を確認
2権限ある危機管理部局体制の構築(副市長をトップとする独立した「安全管理局」)震災誌274ページは体制の充実強化を「図る必要がある」と記すにとどまる確認不能
3-①市職員は全員防災士の資格を取得震災誌282ページ「平成27(2015)年から『釜石市防災士養成研修講座』に取り組んでいる」「令和4(2022)年度末における防災士の資格取得者数は444 人となっており」。同ページは地域住民等も受講していると記す一部の実施を確認(市職員全員の取得は確認不能)
3-②防災担当職員は実践的危機管理講座を毎年受講確認した範囲では、毎年の受講実績を書いた記述は見つからなかった確認不能
4建物の跡地に慰霊碑と、津波到達高を表す記念物を建立震災誌285ページ「『釜石祈りのパーク』には犠牲者1,064 人の内1,002 人の芳名を刻んだ芳名板や献花台からなる慰霊碑を中央に配置し、丘の上には『釜石市防災市民憲章』を刻んだ碑を設置、防災センターを襲った津波の高さ11 mを表示する標識を設置した」履行を確認
5国・自治体・企業・報道機関・住民からなる「津波防災協議会」を立ち上げ、年1回は情報を共有確認した範囲では、この名称のネットワーク設置と年1回の情報共有を書いた記述は見つからなかった確認不能

報告書が掲載された市のページ(2014年3月12日更新)を開いた範囲では、提案に対する市の回答や対応方針は、そのページには載っていない。上の表の「確認できたこと」は、いずれも9年後に刊行された震災誌の記述から拾ったものである。

震災検証そのものは、2011年度版から2014年度版まで報告書が出ている。2014年度版は災害対策本部編・学校・子ども関連施設編・避難所運営編・地域編の4編で、地域編の検証対象は「東部、平田、鵜住居及び唐丹地区」、対象期間は「震災前(備え)~震災当時の動き(避難行動、避難所)」と書かれている。復旧・復興の過程を地域編の対象期間に含めたという記述は、確認した範囲では見つからなかった。

7. スタジアム ── 16,000席は6,000席に戻り、維持費は寄付でまかなわれている

釜石鵜住居復興スタジアム: 本設6,000席+仮設10,000席=16,000席(2019年)→ 現在の掲載席数は約6,000席。年間利用者数は45,116人(2019年度)→ 22,025人(2024年度)。

2016年4月1日号の広報かまいしは、スタジアムの概算費を工種別に載せている。敷地造成1,655・サブグラウンド144・常設スタンドとグラウンド904・仮設スタンドと仮設施設465・その他30、合計3,198(百万円)。仮設席の扱いも同じページに書かれている。

仮設観客席は、ラグビーワールドカップ2019開催時のみの設置で、大会後は撤去します。

大会後、市の掲載席数は「メインスタンド:約3,000席 バックスタンド:約3,000席」に戻っている。ただし、撤去の完了を書いた市の一次資料は、確認した範囲では見つからなかった(撤去作業の様子は2019年11月の報道で伝えられている)。

年間の利用者数は市の統計書に載っている。

年度利用者数
2018年度(平成30年度)18,259人
2019年度(令和元年度)45,116人
2020年度(令和2年度)31,261人
2021年度(令和3年度)21,733人
2022年度(令和4年度)28,315人
2023年度(令和5年度)40,836人
2024年度(令和6年度)22,025人

2021年度については、別の市資料(第2期釜石市スポーツ推進計画・2022年12月)が23,742人と書いている。同じ年度に二つの公表値があり、どちらが訂正値かは確認できていない。

2022年3月31日の「2022スタジアム運営計画」は、年間の目標値を6年ぶん置いた。

計画の推進に当たって、以下の年間目標値を設定するもの。

内訳は、スポーツ試合等が2021年度の17件から2026年度の28件へ、スポーツ以外が120件から180件へ、視察研修等が58件から90件へ、ボランティアが157人から230人へ。この4指標と同じ定義の年度別実績は、確認した範囲では見つからなかった。上の表は利用者数であって、件数ではない。

同じ運営計画は、運営方式についても期限つきで書いている。

令和7(2025)年度までを目途として、市直営による運営を続けながら、指定管理者制度と公募設置許可制度を中心として、その導入に向けて

2026年8月の時点で、確認した範囲では、指定管理者制度または公募設置許可制度を導入したことを書いた市の公表物は見つからなかった。確認できたのは、2025年3月31日付の「民間活力導入に関するサウンディング型市場調査 実施結果報告書」と、2025年6月30日に設立された共創のための組織である。この行は、新しい一次資料で導入時期が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 市サイトのスタジアム関連ページ・運営計画・令和2〜8年度予算、基準日2026年8月17日)

維持管理費は当初予算ベースで年およそ2,500万〜3,100万円である(令和2年度29,298千円、3年度25,680千円、4年度27,266千円、5年度29,792千円、6年度30,469千円、7年度28,575千円、8年度29,136千円。原数値は千円単位、概観は百万円の位で外側へ丸めた)。運営計画26ページは令和2年度の内訳を「利用料収入 3,015千円 維持費 36,895千円 差引管理費 33,880千円」と書いている。

そしてもう一つ、市のふるさと寄付金の活用実績にこの施設が載っている。2023年度は事業費30,223千円のうち25,589千円、2024年度は29,724千円のうち27,297千円が寄付金の充当額である(いずれも原資料の千円単位。万円に直すと2023年度は約3,022万円のうち約2,559万円、2024年度は約2,972万円のうち約2,730万円)。スタジアムの維持管理費の大部分は、市外からの寄付でまかなわれている。

8. 1,035の事業者のうち、376が休業・廃業した

仮設店舗で営業する事業者: 214(2013年4月)→ 171(2015年6月)→ 113(2018年3月末)→ 38(2019年3月末)→ 13(2020年3月末)→ 0(2021年3月末)。同じ期間に、休業・廃業済みは94から376へ増えた。

2024年1月の評価様式に、被災事業者1,035の行き先を追った表がある。

時点再建済み休業・廃業済み再建予定不明仮設営業中
2013年4月406943212141,035
2015年6月480187261711711,035
2018年3月末5683223201131,035
2019年3月末62037700381,035
2020年3月末64737500131,035
2021年3月末6593760001,035

同じ資料はこの表を「令和3(2021)年3 月末には仮設店舗で営業する事業者は0 となり、事業者の再建が図られた」とまとめている。0になった内訳は、659が再建、376が休業・廃業である。

住まいのほうも同じ資料に数字がある。「令和3年3 月末で市外のみなし仮設を含め仮設住宅入居世帯数が0 となり」。復興公営住宅は施工・管理とも1,316戸(釜石市が集合755戸・戸建188戸、岩手県が集合373戸/管理は釜石市が集合817戸・戸建188戸、岩手県が311戸)。宅地は1,450区画(住宅区画1,380・畑や第1種危険区域等70)が整備された。

災害公営住宅の戸数には、もう一つ古い数字がある。会計検査院の2012年度随時報告は「岩手県釜石市は、災害公営住宅を計1,418戸整備する計画であり、県に198戸の整備を委託するほか、210戸については買取方式を採用することとした」と書いている。計画1,418戸に対し、実績1,316戸。差は102戸である。この差がどう扱われたかを説明した文書は、確認した範囲では見つからなかった。

水産のほうは、目標と実績が同じ指標でそろっている数少ない例である。2018年の釜石市水産業振興計画66ページは「計画目標1:釜石市魚市場取扱数量=20,000㌧」「釜石市魚市場取扱金額=36億円(単価;180 円/kg)」を2022年度(原文は平成34年度)の目標として置いた。

魚市場の水揚数量: 目標20,000トン(2022年度)に対し、実績は10,855トン(2020年度)→ 8,064トン(2021年度)→ 6,295トン(2022年度)→ 4,498トン(2023年度)→ 9,629トン(2024年度)。金額は目標36億円に対し、2022年度が9.66億円、2024年度が18.97億円。

仮設で商う人は0になった。内訳は再建659・休廃業376 魚市場の荷捌き場に積まれた浅い荷箱の山。千三十五の事業者が八年のあいだに再建・休廃業・仮設営業のどこへ積み替えられたかを、六つの時点の山の高さで読み分ける。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 仮設で商う人は0になった。 内訳は再建659・休廃業376 期間: 2013年4月〜2021年3月末 | 単位: 事業者 | 母数: 被災事業者1,035 | 基準日: 2026年8月17日 『0になった』の中身を数で確かめたい人へ 2013年4月40694321214 2015年6月48018726171171 2018年3月末568322320113 2019年3月末6203770038 2020年3月末6473750013 2021年3月末659376000 再建済み 休業・廃業済み 再建予定 不明 仮設営業中 『仮設店舗で営業する事業者は0となり、事業者の再建が図られた』(復興交付金事業計画の総合的な実績に関する評価・2024年1月) 出典: 釜石市 復興交付金事業計画の総合的な実績に関する評価(2024年1月)2ページ
魚市場の荷捌き場に積まれた浅い荷箱の山|被災した千三十五の事業者が、二〇一三年から二〇二一年までの六つの時点で再建・休業廃業・仮設営業のどこへ積み替えられたかを山の高さで示し、仮設がゼロになった日の内訳を読み分ける図

9. 数字の目標は、実績と並べると形が見える

社会減の目標: マイナス107人以下(第2期戦略期間内)に対し、実績は▲276人(2020年)・▲302人(2021年)・▲180人(2022年)・▲208人(2023年)。

第3期人口ビジョン・オープンシティ戦略(2025年4月)の「これまでの振り返り」32ページは、第2期の目標と実績を自分で並べている。市の資料が自分で並べているものを、そのまま引く。

指標第2期の目標公表された実績
社会減数「戦略期間内に、社会減数をマイナス107人以下に抑える」▲276人(2020年)・▲302人(2021年)・▲180人(2022年)・▲208人(2023年)
観光入込客数「戦略期間内に、84.85万人を維持する」49.8万人(2020年)・49.2万人(2021年)・61.5万人(2022年)・61.8万人(2023年)

第六次総合計画のほうも、前期と後期で数字が動いている。転入者数は前期基本計画(2021年)が2025年度・2030年度とも1,024人を目標に置き、後期基本計画の概要版(2026年)では2025年3月末の実績711人に対し2030年度の目標が850人になっている。目標1,024人 → 実績711人 → 目標850人。

観光入込客数は、前期が令和7年度670千人回・令和12年度910千人回、後期の概要版が令和6年度610千人回・令和12年度910千人回。誘致による新規立地企業数は、後期基本計画の重点施策KPIに「2社(前期基本計画5か年の立地件数)」「3社(後期基本計画5か年の立地件数)」と並んでいる。

これらはいずれも目標値(KPI)であって、§0-Bの定義でいう約束ではない。約束の台帳の分母には入れず、この節に事実として置く。

10. 釜石だけが、震災当日の議会会議録を読める町だった

市議会会議録の公開: 1999年度以降・全235会議。2011年3月11日の本会議も読める。この宣言で5市町を調べて、震災当日の会議録に機械で到達できたのは釜石だけだった。

釜石市議会はDiscuss Net Premiumという会議録検索システムを使っている。収録は1999年度からで、平成23年3月定例会の会議日程には「03月11日-05号」が実在する。地震は同じ日の14時46分に起きた。

比較のために、この宣言でここまで調べた町の条件を並べる。住田町の会議録は「収録は平成28(2016)年6月以降」とページに明記されている。気仙沼市の会議録システムはrobots.txtがDisallow: /で、機械では取得できず人が開いて読むしかなかった。釜石市はrobots.txtがAllow: /tenant/なので、閲覧ページ側から読める。

この記事のために読んだのは140会議のうち13回分である。そこから拾えた約束の例をひとつ挙げる。2015年9月28日の市長報告。

この9月末に、本郷地区の自力再建用地12区画並びに公営住宅用地12区画、荒川地区の自力再建用地1区画並びに公営住宅用地8区画が完成をいたします。

こういう文が、あと127会議ぶん残っている。釜石で読み残しているのは「無い記録」ではなく「読める記録」である。この点で、釜石は住田や気仙沼とは逆の課題を持つ町だった。


約束の台帳

追跡できた約束20件のうち、履行済3・期限超過3・変更または中止3・確認不能11。期限内進行中と、期限なし・継続中は0件。

ここに載せるのは、型の定義(主体・行為・対象・期限または完了条件の4つが明示された文)に当てはまったものだけである。抜き出した候補文は55件(計画・記録誌から20件、市議会会議録から25件、予算書・広報・運営計画・会計検査院報告から10件)で、そのうち20件がこの定義に合格した。合格しなかった35件は目標値・方針表明・見込み・検討表明にあたるので、この分母には混ぜていない。そのうち種別まで判定して記録した18件を参考シートに全文で載せている(残る17件は候補段階で落としたため、シートには残していない)。選び食いをしないため、守られた約束も同じ表・同じ出典水準で載せる。

釜石市の15年を、全部読みますの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

IDは9市町村を横断する通し台帳(reports/宣言1_15年読破/yakusoku-daicho.tsv)と同じもので、記事はその台帳のビューである。

釜石市の15年を、全部読みますの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

ID約束(要約)主体期限・完了条件初出状態
KA-2011-001118の実施施策を計画期間内に展開する復興まちづくり基本計画2020年度末基本計画・2011年12月23日確認不能
KA-2012-001災害公営住宅を計1,418戸整備する市(会計検査院報告に記載)1,418戸会計検査院 平成24年度随時報告変更(実績1,316戸)
KA-2013-001防災センター被災調査の概要を7月下旬ごろ報告する市長2013年7月下旬2013年6月定例会・6月18日履行済
KA-2014-001新魚河岸市場を2016年4月に全面供用する産業振興部長2016年4月2014年12月定例会・12月16日確認不能
KA-2015-001本郷・荒川地区の用地を9月末に完成させる市長2015年9月末2015年9月定例会・9月28日確認不能
KA-2015-002尾崎白浜・佐須・室浜地区の用地を10〜11月末に完成させる市長2015年10月末・11月末2015年9月定例会・9月28日確認不能
KA-2015-003片岸・鵜住居・嬉石松原・平田地区の造成を完了する復興建設技監2017年度末2015年9月定例会・10月6日変更(2018年度末へ)
KA-2015-004東部地区の宅地造成を完了する復興建設技監2017年度末2015年9月定例会・10月6日変更(2018年度末へ)
KA-2015-005空きのある復興公営住宅を年内に再募集する復興建設技監2015年内2015年9月定例会・10月6日確認不能
KA-2016-001仮設観客席を大会後に撤去する市(広報かまいし)大会終了後広報かまいし 2016年4月1日号確認不能
KA-2018-001全区画の宅地造成と全復興公営住宅を完成させる市長2018年度2018年3月定例会・2月26日履行済
KA-2018-002医療費の一部負担金免除を2018年12月31日まで実施する市長2018年12月31日2018年3月定例会・2月26日確認不能
KA-2018-003釜石港湾口防波堤の復旧工事を3月に完了する市長2018年3月2018年3月定例会・2月26日履行済
KA-2018-004新市庁舎を2020年度の完成を目指して準備する市長2020年度2018年3月定例会・2月26日期限超過
KA-2019-001施策71「市庁舎の整備」を完了する進捗表(所管課)2022年度118施策の進捗・2019年2月期限超過
KA-2019-002宅地周辺部の残工事・換地処分等を完了する都市整備推進室2020年度118施策の進捗・2019年2月確認不能
KA-2019-003上平田川の水門整備を完了する防災危機管理課2019年度118施策の進捗・2019年2月確認不能
KA-2019-004漁業集落部の移転元地の整備を完了する所管課2020年度118施策の進捗・2019年2月確認不能
KA-2019-005学校給食センターを2020年4月に供用開始する所管課2020年4月118施策の進捗・2019年2月確認不能
KA-2022-002指定管理者制度・公募設置許可制度を導入する2022スタジアム運営計画2025年度まで運営計画・2022年3月31日期限超過

「確認不能」11件が意味すること。 これは約束が破られたという意味ではない。その約束のその後を書いた公表物に、確認した範囲でたどり着けなかったという意味である。学校給食センターは運営委員会の開催結果が2023年度分から公表されており、施設が動いていること自体は読み取れる。ただし「2020年4月に供用開始した」と書いた文書には行き着いていない。11件はすべて、新しい一次資料で状態が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 目録19,796行・本文まで開いた資料88件・会議録140回分のうち13回分、基準日2026年8月17日)

追跡できた約束21件。いちばん重い段は「確認不能」12件 帳場の壁に据えられた六段の木の棚。段ごとに掛かった木札の枚数が、約束の状態別の件数を表し、いちばん下の段だけが十二枚で重く垂れているのを読み分ける。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 追跡できた約束21件。 いちばん重い段は「確認不能」12件 期間: 2011年〜2026年 | 単位: 件 | 母数: 候補52件のうち定義に合格した21件 | 基準日: 2026年8月17日 守られた約束も、まだ終わっていない約束も、同じ物差しで見たい人へ 履行済 3件 防災センター調査の概要報告/全区画の宅地造成と全復興公営住宅/釜石港湾口防波堤の復旧 期限内進行中 0件 この範囲では該当なし 0 期限超過 3件 新市庁舎(2020年度)/施策71 市庁舎の整備(2022年度)/ スタジアムの指定管理者制度等の導入(2025年度まで) 期限なし・継続中 0件 この範囲では該当なし 0 変更・中止 3件 災害公営住宅 計画1,418戸→実績1,316戸/造成の期限が2017年度末→2018年度末(2地区) 確認不能 12件 約束が破られたという意味ではない。その後を書いた公表物に、確認した範囲でたどり着けなかったという意味 抜き出した候補文 52件 主体・行為・対象・期限(または完了条件)の4つが明示された文 21件 確認した範囲: 目録19,796行/本文まで開いた資料88件/会議録140回分のうち13回分 12件はすべて、新しい一次資料で状態が確認できた時点で書き換わる
帳場の壁に据えられた六段の木の棚と、そこに掛かった二十枚の木札|追跡できた約束が履行済・期限内進行中・期限超過・期限なし継続中・変更中止・確認不能のどの段に置かれているかを札の枚数で示し、確認不能の段だけが十一枚で重いことを読み分ける図

残っていない記録の地図

釜石は、この宣言でここまで調べた町のなかで空白がいちばん少ない町だった。だからこの節は短い付録になる。それでも6つの節は埋める。②が薄いことは、この町の記録が厚いことの裏面である。

① 探した範囲

市公式サイトのsitemap 9本・HTMLページ4,110件を全取得(4,109件がHTTP200・1件が404)。各ページ本文から添付PDFのURLを抜き、14,225本を全数HTTPで確認(14,191本が200・404が28・403が3・接続不能が3)。市議会会議録は収録一覧(1999〜2026年度・全235会議)を取得し、2010年度以降の140会議を目録化。会計検査院は平成23〜令和6年度の全14年度・6,012ページを機械で巡回し、本文に「釜石」を含む61ページを採取。岩手県は/shinsaifukkou/配下763ページを巡回し、添付PDF 3,203本を全数ダウンロードして本文を開き、1,226本に「釜石」の記載を確認。合計19,796行。

② 無いもの一覧

文書の種類期間状態探した範囲
広報かまいしのバックナンバー2011年3月〜2013年12月現行公開範囲に無い市サイトの広報ページを機械で全件確認したところ、公開されているのはNo.1593(2014年1月15日号)からNo.1884(2026年7月15日号)までの292号で、番号の抜けは0。2013年以前の号にあたるページは、この範囲では見つからなかった
118施策の進捗(計画期間終了時点)2019年3月〜2020年度末現行公開範囲に無い目録19,796行のうち表題に「復興まちづくり基本計画」を含む21行を全件確認。進捗を数で示すものは2019年2月公表の2件のみ
議会会議録の本文2010年度〜2026年度・140会議機械には非公開(人は読める)会議録システムのrobots.txtが/dnp/配下をDisallowとしているため、索引取得の2回だけに留め、本文は機械で取得していない。閲覧ページからは人が読める
市サイトの一部の配下機械には非公開(人は読める)robots.txtのDisallow(/_system/ /search.html /docs/2026060200042/ /form/forms/)は取りに行っていない
リンクは生きているが本体が開けない添付旧URL消失現に公開中のページからリンクされている添付PDFのうち、404が28本・403が3本・接続不能が3本。「かつて公開されていた」を推定ではなく実測で言える形の欠け
発行年が特定できない文書期間不明期間不明目録19,796行のうち5,145行(26%)は、表題にも親ページ表題にも更新日にも年の手がかりが無い。文書は在るのに、時系列に並べられない
会計検査院の全文検索探索範囲で未確認全文検索がJavaScript前提で機械からは必ず0件になるため使っていない。61件は年度別目次からリンクをたどって到達した分であり、「61件しかない」ではない

この表の「現行公開範囲に無い」は、過去に作られなかった・保存されていないという意味ではない。市の現行の公開範囲で、上に書いた探し方では見当たらなかった、という意味である。

③ 背景事情(因果を示さない参考情報)

サイトの記事IDはdocs/YYYYMMDD…の形式で、広報の親ページは2014年のIDから始まる。CMSの入替や再構築で過去記事の入口が変わることは、どこの役場にもある運用である。議会会議録システムのrobots.txtによる/dnp/のDisallowは、内部APIへの機械アクセスを制限する一般的な設定で、閲覧ページ側はAllow: /tenant/になっている。会計検査院の全文検索がJavaScript前提であることは、釜石市に固有の事情ではない。これらは事情の記載であって、原因の説明ではない。

④ 誰の何が「市の公開資料では」読めないか

  • 震災から2年10か月のあいだ、市が全世帯に配った広報紙に何が書かれていたかは、市の公開資料では読めない。復旧の日程、仮設住宅の入居案内、行方不明者の情報。当時の暮らしの一次記録がここに集まっていたはずの期間である。
  • 118の施策が計画期間の終わりにどこまで到達したのかは、市の公開資料では読めない。読めるのは2018年3月末時点(完了24・実施中94)までである。
  • 鵜住居地区防災センターの5つの提案に市がどう答えたのかは、報告書が載ったページでは読めない。9年後の震災誌に、3つ分の手がかりが残っている。

⑤ 市の外に残っている記録

  • 議会会議録の本文は、会議録検索システムの閲覧ページで人が読める(1999年度以降・全235会議)。機械で取れないだけである。
  • 犠牲者と家屋被害の数は、岩手県復興防災部防災課が四半期ごとに更新するPDFに市町村別で載っている(2026年7月31日現在版まで確認)。
  • 復旧・復興事業費と災害公営住宅の計画戸数は、会計検査院の報告に釜石市名で載っている(2015年3月の報告は「釜石市が600億余円」「県全体に占める割合16.3%」と記載)。
  • 仮設住宅の世帯数や自治会の状況は、復興庁の現地調査結果報告に残っている。
  • 岩手県の/shinsaifukkou/配下には、釜石の記載があるPDFが1,226本ある。
  • 震災前の広報紙は、国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)や、紙の保存分に残っている可能性がある(未確認)。

⑥ まだ取り戻せるか

手段見込み
会議録本文を人が読むできる(140会議のうち13回分を読了。残り127回分)
広報かまいし2011〜2013年分の所在確認未確認(WARP・県立図書館・国会図書館・市の情報公開請求)
118施策の最終状態の確認未確認(決算資料・議会答弁・情報公開請求)
防災センターの提案への市の対応の確認未確認(震災誌以外の一次資料・議会答弁)
発行年不明5,145件の年の特定一部できる(本文を開けば奥付から特定できるものがある)

この節は「これから取り戻す」という約束ではない。この手段が残っているという記載までである。

釜石で欠けているのは、記録ではなく読む時間だった 管理人室の壁に掛かった鍵箱。ほとんどのフックに鍵が掛かっているなかで、鍵が無い・扉が無い・機械では回せないという六通りの欠け方だけが混じっているのを読み分ける。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 釜石で欠けているのは、 記録ではなく読む時間だった 期間: 2011年3月〜2026年8月 | 単位: 件・号・会議 | 母数: 目録19,796行 | 基準日: 2026年8月17日 何が読めて、何が読めないのかを先に知りたい人へ 議会会議録 1999年度以降・ 全235会議。2011年3月11日の 本会議も読める 市サイト HTML 4,110ページ・ 添付PDF 14,225本を 全数確認済み 広報かまいし 2011年3月〜 2013年12月 公開は292号(No.1593〜No.1884)・ 番号の抜けは0 現行公開範囲に無い 118施策の進捗 2019年3月〜 2020年度末 表題に該当する21行を全件確認・ 進捗は2019年2月の2件のみ 現行公開範囲に無い 議会会議録の本文 140会議 robots.txtが内部APIをDisallow。 閲覧ページからは読める 機械には非公開(人は読める) 市サイトの一部の配下 robots.txtのDisallow 4か所 機械には非公開(人は読める) リンクは生きているが本体が 開けない添付 404が28本・403が3本・ 接続不能が3本 旧URL消失 発行年が特定できない文書 5,145件(目録の26%)。文書は在るのに 時系列に並べられない 期間不明 読んだのは19,796点のうち88件。残り19,708点は目録に載っているだけで未読 『現行公開範囲に無い』は、作られなかった・保存されていないという意味ではない
管理人室の鍵箱|鍵が無い・扉が無い・機械には開かないが人は開けられるという三種類の欠け方を並べ、釜石で欠けているのは記録ではなく読む時間であることを読み分ける図

まだ読めていないもの

正直に件数で書く。

  • 目録19,796点のうち、本文まで開いたのは88件(0.44%)。残り19,708点は未読。
  • 市議会会議録140会議のうち、本文を読んだのは13回分(9.3%)。残り127回分は未読。そのうち2011年3月11日の本会議(平成23年3月定例会・第5号)は、まだ読んでいない。
  • 広報かまいし292号のうち、本文を確認したのは1号のみ(2016年4月1日号)。
  • 会計検査院で釜石市の記載がある61件のうち、原文を確認したのは8件。
  • 復興まちづくり基本計画の118施策のうち、進捗表の記述まで確認したのは9施策。
  • 復興記録誌「釜石復興の軌跡」(本編・資料編)、震災誌「撓まず屈せず」(158MB)、教訓集と証言・記録集は、必要箇所を拾って引用しただけで、全冊は読んでいない。
  • 発行年が特定できない5,145件は、時系列に並べられないまま残っている。

7種の母集団のうち、達成率100%は「サイト在庫目録の機械巡回」の1種だけである。この記事の題は「全部読みます」であって「全部読みました」ではない。残りは読み進めて、この記事を更新していく。


出典一覧

第1章 人口

第2章 犠牲者と被害

第3章・第4章 復興まちづくり基本計画

第5章 新市庁舎

第6章 鵜住居地区防災センター・震災検証

第7章 スタジアム

第8章 事業者・水産

第9章・第10章 目標値・議会会議録

目録・母集団登録

  • 釜石市 母集団の事前登録(7種の分母と数え方) https://sanriku-happiness.com/shiryo/kamaishi-boshuudan/
  • 釜石市 公開文書 目録(19,796行・2026年7月30日作成)……サイトには載せていない制作側の作業台帳。必要な方は下記の窓口までご連絡いただきたい。

版と訂正履歴

  • 第1版(2026年8月17日)公開。基準日2026年8月17日。
  • 2026年8月24日 訂正。 出典3本のリンク先が読者から開けない場所(非公開のリポジトリ)を指していたので、母集団の事前登録参考シートをこのサイト上に公開し、リンクを張り替えた。あわせて「約束の台帳」の記述を訂正した——参考シートに載っているのは35件ではなく18件(残る17件は候補段階で落としており、記録に残していない)。

この記事の数字はすべて、上に挙げた原典から転記したものである。転記の誤りや、新しい一次資料による更新に気づかれた方は、下記の窓口までお知らせいただきたい。該当する行を書き換え、この欄に日付と内容を残す。

「確認不能」と書いた11件は、その約束が守られなかったという意味ではなく、その後を書いた公表物にこちらがたどり着けていないという意味である。心当たりの資料があれば、それも教えていただけるとありがたい。

連絡窓口: 三陸ハピネス(岩手県陸前高田市)/ お問い合わせ

このシリーズは、9市町村ぶんの約束を一つの通し台帳にまとめ、「約束されて、まだ終わっていないこと」を市町村をまたいで数えられるようにすることを目指している。ここまでに公開したのは陸前高田市・大船渡市・住田町・大槌町と、この釜石市である。順位はつけない。並べるだけである。

まとめ

  • 約束の状態は、履行済みだけでなく確認不能まで同じ物差しで並べた。
  • 118施策の最終状態は、確認した公開資料の範囲では見つからなかった。
  • 数字は大小だけでなく、何を数えたものかと出典を確かめて読む。

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