宮古市の公開資料18,697件を積み上げた読書机のイメージ。カードに 宮古市の15年 欠番になった一号
三陸を知る 約47分

📚 欠番になった一号――宮古市の15年を、公開資料だけで読む

岩手県宮古市の公開資料18,697件を機械で巡回して目録にし、広報紙の欠番、四つの町だった人口、21回書き直された計画、動いた完成予定を原表まで戻して確かめた記録。読めたことと同じ重さで、読めなかったことを書いています。

この記録の見取り図

たどった公開資料11,878件(公開資料の目録)

  1. この記事で分かること
  2. 1No.138は、欠番になった
  3. 2ひとつの市になった、四つの町
  4. 3計画は、21回書き直された
  5. 4完成予定が動いた施設
  6. 5住まいの数は、合った
  7. 6お金の山と、その引き際
  8. 7就航して、一時休止のまま
  9. 8検査が見たもの
  10. 92040年に確保するはずの人数の、すぐ上にいる
  11. 約束の台帳
  12. 残っていない記録の地図
  13. まだ読めていないもの
  14. まとめ
  15. 関連記事

上から順に並んでいます。気になる章から読んで大丈夫です。

この記事で分かること

  • 「広報みやこ」の号数に残る欠番と、震災の年の広報を読むための保管先
  • ひとつの市になった四つの地区の人口と、混ぜてはいけない人口の物差し
  • 完成予定が動いた施設、約束の台帳、残っていない記録とまだ読めていない資料

この記事の作り方――読む人への約束

  • 読めた範囲: 文書11,878点・のべ2,867ページ相当・会議録135回分。
    • 「文書11,878点」= 市の公式サイトを機械で巡回して作った目録18,697行のうち、2010〜2026年と特定できた行の数(目録= reports/宣言1_15年読破/miyako/目録.tsv)。
    • 「のべ2,867ページ相当」= 計画・報告書46冊のページ数を1冊ずつ数えて足した合計。広報366号・決算書9年度分などのページ数は数えていないので、この数には入っていない。
    • 「会議録135回分」= 会議録検索システムの会議一覧を年度で数えた、2011〜2025年度の定例会・臨時会の合計。
  • 未読: 中身まで読んだのは、会議録4回分・計画8冊・検査報告2件だけである。残りは「どこに何があるか」を確かめただけで、開いていない。内訳は「まだ読めていないもの」に全部書く。
  • 基準日: 2026年8月17日。更新されるページはこの日の状態として扱う。

そのうえで、この記事の作法を5つ。

  • 書くのは公開文書に書いてあることだけ。報道値・SNSの数字は使わない。
  • 誰かを責めない。個人名・議員名・職員名を出さない。役職と文書名と年月日で示す。
  • 震災当日の描写はしない。
  • 「無い」と書くときは、必ずどこまで調べた範囲での話かを添える。裏が取れていないものは ※要確認
  • 年は西暦。和暦は原文引用の中だけ残す。
  • 金額は、億円規模のものは億円に丸めて書き、原数値は出典側に置く。億円に満たないものは原資料の単位(千円・万円)のまま書き、読みやすい概算を括弧で添える。

この記事は「宮古市はこう復興しました」ではない。公開されている資料だけで、ひとつの市の15年をどこまで読めるのかを実際にやってみた記録である。読み切ったとは書かない。どこまで届いて、どこで止まったかを数字で書く。


1. No.138は、欠番になった

No.137(2011年3月1日) → No.138 欠番 → No.139(2011年6月1日・写真特集 津波)。 広報みやこの号数の並びに、震災は「欠番」という一行として残っている。

宮古市の広報紙「広報みやこ」の号数を、市の現行サイトと国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)の両方から拾って数えた。拾えたのは459本、No.44からNo.504まで。連番の穴は2つだけだった。No.44からNo.504は461個の番号なので、461から穴2つを引いて459本になる(穴を1つと数えると460本になり、数え方で1本ずれる)。

ひとつめの穴について、市は平成22年度(2010年度)のバックナンバーページに一行だけ書いている。

No.138 は欠番となります。

その前後を並べる。No.137は2011年3月1日号、No.139は2011年6月1日号(写真特集 津波)である(原資料の表記は「平成23年3月1日号」「平成23年6月1日号」)。あいだの3か月に通常号は無く、そこを埋めているのが「広報みやこ特別号1」から「特別号5」までの5本で、2011年度のページには「※広報みやこ特別号1~ 5は東日本大震災に伴う特別号です。」と注記されている。

ふたつめの穴は No.423 である。令和4年度のバックナンバーページは No.422(2023年4月1日号)で終わり、令和5年度のページは No.424(2023年4月15日号)から始まる。確認した市の公開ページの範囲では、No.423 はどの年度ページにも見つからなかった。欠番と書かれてもいない。〔状態: 探索範囲で未確認〕

この行は、新しい一次資料で No.423 の所在または欠番の理由が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 市の広報バックナンバー全年度ページとWARP採取分・基準日 2026年8月17日)

No.138は欠番となります 低い光の差す書架に、製本された広報紙の背が十五年ぶん縦に並び、上のほうで一冊分だけ背が抜けている。抜けた場所の前後の番号と、右の柱に刻まれた計画の書き直しの粗密を、読み分ける図。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA No.138は欠番となります No.137 2011年3月1日 No.138 欠番 No.139 2011年6月1日 写真特集 津波 2016年 2021年 2026年 この3か月を埋めたのは 震災特別号1〜5 宮古市復興整備計画 21版 2016年3月のあと 3年半、書き直しが 止まる 2011年3月1日以降の号 366本+特別号6種 連番の穴は2つ No.138 と No.423 2011〜2016年度の号は市のサイトに無く 国立国会図書館WARPにある No.504 2026年8月15日 基準日 2026年8月17日
書架に並ぶ広報紙の背|低い光の差す書架に、製本された広報紙の背が十五年ぶん縦に並び、上のほうで一冊分だけ背が抜けている。抜けた場所の前後の番号と、右の柱に刻まれた計画の書き直しの粗密を、読み分ける図

2011年度の広報を読むには、宮古市ではなく国立国会図書館を開く

もうひとつ、号数を数えていて分かったことがある。平成19年度から平成28年度(2007〜2016年度)の広報みやこは、市のサイトには置かれていない。市のバックナンバーページはこう書いている。

(注意)下記サイトよりダウンロードしてください。国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)にリンクします。

リンク先のURLは、旧サイトの階層(www.city.miyako.iwate.jp/kikaku/koho/kouhou/)を指している。現行サイトを全部巡回した範囲では、この階層は見つからなかった。WARP側の採取日は2022年7月5日、ページ自体の更新日は2012年4月23日のままである。

つまり、震災の年の広報を読む人は、宮古市のサイトではなく国立国会図書館の保管庫を開くことになる。これは「記録が消えた」ではない。市が外部の保管庫へリンクを張り、そこに残してある、という状態である。

同じ棚には「広報かわい」が平成19・20・21年度(2007〜2009年度)の3年度分並んでいる。川井村の編入は2010年1月1日で、広報かわいは2009年度で終わっている。旧田老町・旧新里村(2005年6月6日合併)の広報紙は、確認したこの棚の範囲では見つからなかった。


2. ひとつの市になった、四つの町

田老地区 4,302人(2010年) → 3,172人(2015年)。同じ5年で、市全体は4.6%減、宮古地区は2.2%減、田老地区は26.3%減。 市全体の増減率の5倍を超える落ち方をした地区が、ひとつだけある。

いまの宮古市は、3回に分けて今の形になった。2005年6月6日に旧宮古市・田老町・新里村が合併し、2010年1月1日に川井村を編入した。どちらも震災(2011年3月)より前に終わっているので、2011年以降の数字は同じ市域で連続している。震災前後を比べるときに分母は動いていない。

2005年より前と比べるときだけ、組み替えが要る。その組み替え済みの時系列を、市自身が統計書に載せている。宮古市統計書 令和7年版 第2章「人口」から、国勢調査(各年10月1日)の地区別を写す。

宮古市 計宮古地区田老地区新里地区川井地区
2000年66,98654,6384,8003,7853,763
2005年63,58852,2124,5743,4643,338
2010年59,43049,1454,3023,0732,910
2015年56,67648,0513,1722,8522,601
2020年50,36943,1622,7292,4192,059

4地区の合計は各年の市の総人口と一致する(2015年 48,051+3,172+2,852+2,601=56,676)。当方で足し直して確かめた。

震災をまたぐ2010年から2015年の増減率は、市全体が−4.63%、宮古地区が−2.23%、新里地区が−7.19%、川井地区が−10.62%、田老地区が−26.27%である。市全体の値は4地区の平均ではなく、4地区を合わせた総数の増減率である。

この記事は、この差の理由を書かない。国勢調査の2時点を並べただけでは、死亡・市内での移転・市外への転出・震災前からの減り方を分けられないからである。分けられる一次資料が確認できた時点で、この行は書き換わる。(確認済みの範囲: 宮古市統計書 令和7年版 第2章・基準日 2026年8月17日)

ひとつの市になった、四つの町の人口 雨だれの跡が残る四本の古い門標が並び、柱に刻まれた二十年ぶんの目盛りの高さで、合併してひとつの市になった四つの地区の人口を並べる。一本だけ途中で急に低くなる段を読み分ける図。 ひとつの市になった、 四つの町の人口 国勢調査・各年10月1日・単位は人 宮古 2000年54,638 2005年52,212 2010年49,145 2015年48,051 2020年43,162 田老 2000年4,800 2005年4,574 2010年4,302 2015年3,172 2020年2,729 新里 2000年3,785 2005年3,464 2010年3,073 2015年2,852 2020年2,419 川井 2000年3,763 2005年3,338 2010年2,910 2015年2,601 2020年2,059 2010年 4,302 → 2015年 3,172 5年で26.3%減 2005年6月6日 田老町・新里村と合併 2010年1月1日 川井村を編入 同じ5年で 市全体は4.6%減 宮古地区は2.2%減 4地区の合計は各年の市の総人口と一致する 出典 宮古市統計書 令和7年版 第2章(国勢調査) 基準日 2026年8月17日
四本の門標|雨だれの跡が残る四本の古い門標が並び、柱に刻まれた二十年ぶんの目盛りの高さで、合併してひとつの市になった四つの地区の人口を並べる。一本だけ途中で急に低くなる段を読み分ける図

人口の数字は、3つの物差しで書かれている

市全体の数字を並べるときに、混ぜてはいけない物差しが3つある。

物差し数え方15年の両端
国勢調査10月1日に常住している全員(外国人を含む)59,430人(2010年) → 44,277人(2025年・速報)
住民基本台帳(3月1日)住民基本台帳に載っている人60,124人(2011年3月1日) → 44,419人(2026年3月1日)
住民基本台帳(10月1日・統計書)同上58,893人(2011年) → 44,795人(2025年)

さらに、2012年8月1日以降は外国人住民が住民基本台帳に含まれる。市の「東日本大震災以降の人口・世帯数」ページにも、統計書の注記にも、その旨が書かれている。2012年3月と2013年3月のあいだに定義が変わっているので、住民基本台帳の系列を一本の線として読むときは、そこに継ぎ目があることになる。

2025年の国勢調査は2026年5月29日公表の速報集計であり、確定値は基準日時点で未確認である。

人的被害は、岩手県が2026年8月7日に公表した「東北地方太平洋沖地震に係る人的被害・建物被害状況一覧」(2026年7月31日現在)で、宮古市は直接死420人・震災関連死56人・死者計476人・行方不明者94人である。この文書に「最終確定値」との記載は無い。市の古い資料にある「死者517人」は死亡届・死亡認定を含む別の集計なので、混ぜて使えない。


3. 計画は、21回書き直された

当初計画(2012年9月26日) → 第18回変更(2016年3月24日) → 3年半あいて第19回(2019年9月9日) → 第20回(2021年3月22日)。 21版のうち18版が、最初の4年に集まっている。

宮古市復興整備計画は、市が作り、岩手県のページに全版の公表日が並んでいる。当初計画に第1回から第20回までの変更を足して、21版ある。

版数
2012年3(当初計画を含む)
2013年6
2014年3
2015年6
2016年1
2017年0
2018年0
2019年1
2020年0
2021年1

土地の使い方を変えるたびに計画を書き直す仕組みなので、版が増える期間は工事の設計が動いている期間にあたる。2016年3月の第18回のあと、公表日は3年半あいている。

いっぽう、宮古市東日本大震災復興計画そのものは、基本計画(2011年10月・100ページ)と推進計画(2012年3月30日・70ページ)の2冊で、第○次改定版は、確認した市の復興計画ページとサイト内検索の範囲では見つからなかった。基本計画には「復興計画は、適切な進行管理のもと、社会経済情勢の変化や復興の進ちょく状況、国や県の計画の変更などを踏まえ、必要に応じて見直しを行うものとします。」と書かれている。〔状態: 探索範囲で未確認〕

進捗を年に一度まとめた冊子は、2020年3月版で終わっている

欠番になった一号――宮古市の15年を、公開資料だけで読むの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

復興の進み具合をまとめた「復興状況」のパンフレットは、2015年3月版から2020年3月版まで6版ある。2020年3月版より後の版は、確認した市の復興関連ページの範囲では見つからなかった。

この冊子が重要なのは、次の節で扱う「完成予定」がここに書かれているからである。


4. 完成予定が動いた施設

鍬ヶ崎地区の海岸防潮堤: 2016年度末(2013年12月の答弁) →(2016年1月の県ロードマップ見直しで)2017年度末 → 2019年9月完成。 市はその見直しを議会でこう説明している。

県は、社会資本の復旧・復興ロードマップを見直し、平成28年1月25日に公表いたしましたが、市に対しましては1月14日に事前説明がございました。そこで鍬ヶ崎地区の防潮堤に関しましては、完成時期を1年延長し平成29年度末完成とする説明を受けましたが、到底受け入れられるものではございませんでした。

(2016年2月29日・平成28年3月定例会・市長答弁。当方で会議録本文を開いて逐語照合した)

完成は2019年9月で、市の復興状況2020年版と岩手県の資料の両方に記載がある。当初の2016年度末(2017年3月)から、2年6か月ずれた。

閉伊川水門: 3年おくれの2020年度末(2016年6月の答弁) → 2026年度完成見込み(2020年3月の市の資料)。 市は2016年6月の議会でこう説明している。

その後、ことしに入ってから、事業費約295億円への増額と完成時期を平成32年度末として3年おくれとすることが判明をいたしております。

(2016年6月14日・平成28年6月定例会・市長答弁。当方で会議録本文を開いて逐語照合した)

その後、市の復興状況2018年版と2019年版は「津波対策施設のうち、防潮堤、水門及び防潮林の整備の進捗状況は、図のとおりです。平成32年度までにすべて完成する見込みです。」と書いている。そして2020年3月版では、閉伊川水門だけが2026年度完成見込みへ移っている。前の節で書いたとおり、年次の進捗パンフレットはこの2020年3月版が最後である。

2026年8月17日の時点で、閉伊川水門はまだ完成していない。岩手県は2026年度内の完成予定としている(2026年4月3日の県公式の発言記録)。事業費は、2020年2月の県議会で約400億円という見込みが示されている。最終の精算額は、確認した範囲では見つからなかった。

〔状態: 期限超過〕この行は、閉伊川水門の完成年月と精算後の事業費が確認できた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 市の復興状況パンフレット6版・会議録135回分・岩手県の海岸事業ページと発言記録・基準日 2026年8月17日)

田老の堤は、二本ある

田老の二線堤 2017年3月完成、高さT.P.+10.0m・約1.0km。海側の第一線堤 2021年3月完成、高さT.P.+14.7m・約1.2km。 市議会で2013年9月に「2015年3月の完成を目指す」と説明されたのは、海側のほうである(原文は「平成27年3月の完成を目指し」)。

田老地区の新しい堤は、内陸側の二線堤と海側の第一線堤が組み合わさった形をしている。市議会の答弁は「田老地区の防潮堤壁画が描かれております第一線提の復旧工事は……平成27年3月の完成を目指し工事が進められております」(2013年9月17日・市長答弁)だった。この二本は別の施設で、完成年月も高さも違う。岩手県のロードマップ(2023年3月31日現在)で、内陸側の田老海岸二線堤が2017年3月、海側の田老漁港海岸第一線堤が2021年3月と確認できた。当初の目標から6年後である。

田老地区には、1958年に完成し、通称で「万里の長城」と呼ばれた旧防潮堤があった。この旧堤は、全部が撤去されたわけではない。確認した県の記録と市の震災遺構の案内の範囲では、工事上撤去を要しない部分が残され、一部は震災遺構として保存されている。保存と撤去の範囲を示した竣工図は、確認した範囲では見つからなかった。

そのほかの海岸施設で完成が確認できたのは、神林海岸(磯鶏地区所在)が2017年3月で神林水門は2017年7月31日運用開始、鍬ヶ崎海岸が2019年9月(高さT.P.+10.4m・延長約1.6km)である。

掛け替えられた完成予定 雨だれの跡が残る工事看板が三つ縦に並び、それぞれ完成予定を書いた日付板が古い板の上に重ねて掛かっている。いま生きている予定と、その下に隠れた前の予定を、板の重なりで読み分ける図。 掛け替えられた完成予定 鍬ヶ崎地区海岸防潮堤 2016年度末 2017年度末 2019年9月 完成 当初から2年6か月 閉伊川水門 2020年度末 2026年度 2026年度内 予定 2026年8月17日 現在も未完成 田老漁港海岸 第一線堤 2015年3月 2021年3月 完成 当初から6年 上の板が、いま生きている予定 下の板は、前に掛かっていた予定 板の枚数だけ、予定が書き替えられた 基準日 2026年8月17日
掛け替えられた完成予定|雨だれの跡が残る工事看板が三つ縦に並び、それぞれ完成予定を書いた日付板が古い板の上に重ねて掛かっている。いま生きている予定と、その下に隠れた前の予定を、板の重なりで読み分ける図

5. 住まいの数は、合った

災害公営住宅 25団地766戸。2016年3月の冊子で「766戸のうち743戸が2015年度までに完成」→ 2017年1月に全766戸完成。 期限つきで議会と冊子に書かれ、実績まで同じ数字で閉じた約束である。

欠番になった一号――宮古市の15年を、公開資料だけで読むの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

市の復興状況2016年版はこう書いている。

整備予定の25団地766戸のうち、山口地区23戸を除く24団地743戸が平成27年度までに完成し、平成28年度中にはすべて完成の見込みです。

2017年版以降の冊子は「2017年1月に25団地766戸完成」と書いており、2020年版まで同じ数字が再掲されている。〔状態: 履行済〕

766戸の内訳は、岩手県の資料では市が整備した417戸(2016年度完了)と、県が整備した349戸(2015年度完了)である。2013年5月の市議会答弁では市事業分を57+231+146=434戸と説明していたので、市の整備分は答弁より17戸少なく、完了は1年遅い。

いま、何戸に人が住んでいるか

災害公営住宅563戸のうち入居514戸・空き49戸で、入居率91.3%。同じ市が管理する震災前からの市営住宅934戸は、入居529戸・空き405戸で56.6%。 同じ表の中に、この二つの数字が並んでいる。

宮古市公営住宅等長寿命化計画(2026年3月18日更新)から写す。2025年4月1日現在、市が管理する住宅は合計1,508戸で、内訳は市営住宅26団地934戸、災害公営住宅18団地563戸、定住化促進住宅2団地11戸。災害公営住宅563戸の配置は宮古地区452戸・田老地区111戸で、市営住宅等全体の約37%を占める。

種類管理戸数入居空き入居率
災害公営住宅(18団地)563戸514戸49戸91.3%
市営住宅(26団地)934戸529戸405戸56.6%
定住化促進住宅(2団地)11戸4戸7戸36.4%
合計1,508戸1,047戸461戸69.4%

市営住宅934戸の空き405戸のうち238戸は「政策空家」——建替えや用途廃止が決まっていて新しい入居者を募集していない住戸である。災害公営住宅の空き49戸には政策空家は無い。

ここで数字が一つ合わない。市が整備した災害公営住宅は417戸、市が管理している災害公営住宅は563戸で、差が146戸ある。県が整備した349戸のうち一部が市の管理に移ったと考えれば説明はつくが、その移管を書いた文書は、確認した市・県の公開資料の範囲では見つからなかった。〔状態: 探索範囲で未確認〕この行は、整備主体別の戸数と管理主体の移管を示す一次資料が確認できた時点で書き換わる。

土地のほうも数字が閉じている。防災集団移転促進事業の5地区の宅地は2015年9月までに全部完成し、造成された宅地は263区画。漁業集落防災機能強化事業の7地区の宅地は2015年3月までに全部完成。土地区画整理は田老地区が2016年3月、鍬ヶ崎・光岸地地区が2018年3月に全宅地が使えるようになっている。

そのあと、土地は使われているか

移転元地の活用開始決定率: 47.8%(2022年末) → 47.8%(2023年末) → 50.7%(2024年末) → 51.3%(2025年末)。 3年で3.5ポイント動いた。

復興庁が毎年公表している移転元地の状況調査から、宮古市の行を写した。分母は33.7ヘクタールで固定されている。ここで注意が要るのは、この率が「いま使われている土地」ではないことである。復興庁の定義は「活用開始済み+活用開始予定」なので、予定の段階のものも分子に入る。

かさ上げ地の年次の利活用率は、確認した市の復興資料・土地公募ページ・復興庁の集計の範囲では見つからなかった。〔状態: 探索範囲で未確認〕


6. お金の山と、その引き際

歳入は306億円(2010年度) → 1,052億円(2012年度) → 392億円(2024年度)。復興基金は53億円(2015年度) → 4.9億円(2024年度)。 数字の上での「復興が終わる」は、こういう形をしている。

普通会計の決算額を、財政状況資料集から並べる。金額は資料の原単位が千円なので、億円へ丸めたものを本文に、原数値を出典側に置く。

年度歳入総額実質公債費比率将来負担比率財政調整基金
2010年度306億円14.2%109.9%28億円
2012年度1,052億円11.9%21.0%68億円
2015年度709億円11.7%20.2%91億円
2019年度424億円8.8%23.9%67億円
2024年度392億円10.4%10.5%51億円

震災復興特別交付税は2011年度から2024年度までの累計で398億円、復興交付金の市分の交付額は累計640億円である。単年で見ると、震災復興特別交付税は2012年度の88億円から2024年度の2億円へ下がった。復興交付金は、確認できた市の進捗資料が2022年度までで、2020・2021・2022年度はいずれも0円である。2023・2024年度はその資料の集計範囲の外で、確認できていない。東日本大震災復興基金の残高は2015年度の53億円から2024年度の4.9億円まで下がっている。

2024年度の歳入392億円は、震災前の2010年度306億円より28.0%大きい。ピークの2012年度からは62.7%小さい。

膨らんで、戻っていった十五年 木の枡が横一列に並び、中身の高さで年度ごとの歳入を示している。真ん中の枡だけ縁まで満ちて両端は浅く、奥にはだんだん空になっていく小さい枡の列がある。膨らんだ年と戻った年を読み分ける図。 膨らんで、戻っていった十五年 2015年度 53億円 2020年度 25億円 2024年度 4.9億円 2010年度 306億円 2015年度 709億円 2012年度 1,052億円 2019年度 424億円 2024年度 392億円 ピークは2012年度。震災前の3.4倍 2024年度は震災前より28.0%大きい 復興基金は2015年度から91%減った 金額は千円単位の原数値を億円へ丸めた。原数値は記事の出典に置いた 基準日 2026年8月17日
膨らんで、戻っていった十五年|木の枡が横一列に並び、中身の高さで年度ごとの歳入を示している。真ん中の枡だけ縁まで満ちて両端は浅く、奥にはだんだん空になっていく小さい枡の列がある。膨らんだ年と戻った年を読み分ける図

決算書は9年度分、財政状況資料集は15年度分

同じ「決算」の棚に、9年度分しか置かれていない資料と、15年度分そろっている資料が並んでいる。

市の「決算の概要」ページ(更新日 2026年3月31日)を全部見た。

資料このページに載っている年度年度数
一般会計・各特別会計 歳入歳出決算書2016〜2024年度9
実績報告書(主要施策の成果)2016〜2024年度9
財政状況資料集2010〜2024年度15

2011年度から2015年度の決算書と実績報告書は、確認したこの棚の範囲では見つからなかった。この5年度は、上の表でいえば歳入が1,052億円まで膨らんだ時期にあたる。財政状況資料集は同じ年度もそろっているので、決算の総額や指標はそこから読める。読めないのは、事業ごとにいくら使ったかを書いた実績報告書のほうである。〔状態: 探索範囲で未確認〕

監査委員の決算等審査意見書は、2020年度から2024年度までの5年度分・PDFで7本。2010年度から2019年度の審査意見書は、確認したこの棚の範囲では見つからなかった。定期監査と例月出納検査の個別の結果は、市の監査・コンプライアンスのカテゴリの中に0件で、制度の説明だけが置かれている。住民監査請求も、制度の案内はあるが個別の結果一覧は無い。市の説明では掲示場等で公表することになっている。「請求が無かった」という意味ではない。

同じページの2008年度の欄には、「財政状況等一覧表(宮古市+川井村)」「財政状況等一覧表(宮古市)」「財政状況等一覧表(川井村)」の3本が並んでいる。市の財政資料そのものが、川井村の編入をまたいで分母を切り替えており、市自身が合計版を作って併記している。


7. 就航して、一時休止のまま

宮古〜室蘭フェリー: 2018年6月22日就航 → 2019年12月20日に休止発表 → 2020年4月1日から宮古寄港を「一時休止」。2026年8月17日現在、「廃止」と書いた一次資料は、確認した範囲では見つからない。 6年以上、休止のままである。

市の「フェリー航路の経過」ページに、就航と休止の日付が並んでいる。フェリーターミナルの整備は岩手県の事業で、総額13.5億円(宮古港フェリーターミナル整備)。これは市の負担額ではない。

市が単年で支出した額は、実績報告書に残っている。2018年度は、利用促進協議会への補助1,900万円、曳船常駐への補助7,300万円、ターミナル管理1,672万404円で、この3つを足すと1億872万404円になる(当方で足した)。就航から休止までに市が支出した累計額を一つにまとめた文書は、確認した範囲では見つからなかった。

〔状態: 変更・中止〕この行は、航路の再開または正式な廃止が公表された時点、あるいは市が累計負担額を公表した時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 市のフェリー航路ページ・2018年度実績報告書・岩手県の港湾資料・基準日 2026年8月17日)


8. 検査が見たもの

会計検査院の報告に宮古市の名前が出るのは16報告。そのうち、宮古市を単独で不当と認定したのは1件。 残る15件は、その大半が被災自治体を横に並べた表の中に市の行がある、という形である。

会計検査院の公式データベースを2010年度から2024年度まで「宮古市」で検索して、本文と別表をまとめると16報告になる。復興関連が多く、災害廃棄物の処理(2011・2013年度)、入札不調(2012年度・宮古市は4件・2億9,800万円)、災害公営住宅の整備状況(2012年度)、防災集団移転促進事業の宅地(2013年度・市内3団地28区画のうち未契約6・空き3区画)、復興事業の実施状況(2011・2012・2014・2015・2016・2022年度)などである。

宮古市の名前が事業主体として表に載り、金額まで書かれているのは、令和6年度(2024年度)決算検査報告の「生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[11都府県]」の1件である。この報告は11都府県の13の事業主体をまとめて扱っており、そのうちの1行が宮古市である。表の該当行を、列名ごと写す。

宮古市の値
部局等岩手県
事業主体宮古市
年度平成29〜令和5(2017〜2023年度)
国庫負担対象事業費39,082千円(約3,908万円)
左に対する国庫負担金交付額29,311千円(約2,931万円)
不当と認める国庫負担対象事業費4,277千円(約428万円)
不当と認める国庫負担金交付額3,208千円(約321万円)
摘要年金受給権の調査が十分でなかったものなど

過大とされたのは最後の3,208千円(約320万円)であって、いちばん上の39,082千円(約3,908万円)ではない。13の事業主体を合わせた不当と認める国庫補助金の合計は97,817,226円である。これは市の事務手続き(年金受給権の調査)についての検査結果であり、保護を受けている人については何も書かない。確認した2010〜2024年度の検査報告・随時報告・検査要請の全文検索の範囲では、宮古市の復興交付金・災害公営住宅・防潮堤・水産事業を単独の不当事項として認定した記載は見つからなかった。


9. 2040年に確保するはずの人数の、すぐ上にいる

2016年「2040年43,000人の確保を目指します」 → 2025年の国勢調査速報44,277人 → 2025年の計画では2040年34,422人。 43,000人は15年後に「下回らないように保つ」数として書かれた。いまの44,277人は、その数のすぐ上にある。

市の第1期人口ビジョン(2016年2月)にはこう書かれている。

本市においては2040年43,000人、2060年36,000人の人口の確保を目指します。

同じページに、合計特殊出生率を「2040年までに2.07へと段階的に向上させることを目標に、2020年には1.74程度、2030年には1.91程度へと上昇させることを目指します。」とある。

2025年の国勢調査(速報集計)の宮古市は44,277人だった。この43,000人は「2040年に確保する」数であって、早く下回れば達成という数ではない。2025年時点の44,277人は、その数を1,277人上回っている。

第3期人口ビジョン(2025年3月)は、2040年を34,422人、2050年を28,078人としている。この数字は市の独自推計であり、第1期の43,000人のような「目指します」という書き方ではない。合計特殊出生率も、2025年1.48から2045年2.00へという推計になっている。

復興計画のほうはどうか。2017年の「復興事業の成果と評価」は、復興計画に数値目標が無いことを明記している。2011年の基本計画を読んだ範囲では、将来人口の数値目標は見つからなかった。2012年の推進計画については、人口目標値の有無をまだ確認できていない。〔状態: 探索範囲で未確認〕確認できた範囲で人口の目標値が最初に出てくるのは、2016年2月の第1期人口ビジョンである。

2040年に確保するはずの線 川岸に立つ苔の生えた量水標の柱に、十五年ぶんの人口を書いた札が上から下へ打たれ、水面はいちばん低い札のすぐ上にある。さらに下へ、確保するとした線と、後年の推計の線が引かれているのを読み分ける図。 2040年に確保するはずの線 2010年 59,430人(国勢調査) 2015年 56,676人 2020年 50,369人 2025年 44,277人(速報) 2040年に確保するとした 43,000人(2016年 第1期人口ビジョン) 2025年の計画が示した2040年の推計34,422人 43,000人は2040年に下回らないための線 早く下回れば達成、という数ではない 2025年はその線の1,277人上 基準日 2026年8月17日
2040年に確保するはずの線|川岸に立つ苔の生えた量水標の柱に、十五年ぶんの人口を書いた札が上から下へ打たれ、水面はいちばん低い札のすぐ上にある。さらに下へ、確保するとした線と、後年の推計の線が引かれているのを読み分ける図

この節の数字は目標であって、§0-Bの定義でいう「約束」ではないので、前の台帳には入れていない。〔ラベル: 目標〕この行は、2025年国勢調査の確定値が公表された時点、または第3期以降の人口ビジョンで2040年の値が改められた時点で書き換わる。(確認済みの範囲: 人口ビジョン3期分・復興計画2冊・成果と評価・基準日 2026年8月17日)


約束の台帳

欠番になった一号――宮古市の15年を、公開資料だけで読むの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

追跡できた約束16件のうち、履行済7・期限内進行中0・期限超過2・期限なし・継続中0・変更・中止0・確認不能7。

ここでいう「約束」は、主体(役職)・行為・対象・期限または完了条件の4つがそろっている文だけである。期限を過ぎてから完了したものも「履行済」に数え、当初の期限と実績の差は同じ行に並べて書く(終わったことを終わっていないように見せないため)。「引き続き取り組んでまいります」のように対象や期限が無いものは方針表明として外し、人口目標のような数値目標も外した(外したものは節9で別に扱う)。守られた約束も、まだ終わっていない約束も、同じ表に同じ書き方で載せる。選んで載せていない。

主体が岩手県の事業も入れてある。ただしこれは市長・部長が市議会で「県からこう説明を受けた」と述べた内容であって、県自身が出した約束の文ではない。県が公表した文書と突き合わせていない段階のものなので、県の不履行として読まないでほしい。台帳の主体の欄にも同じ断りを入れてある。

ID対象主体期限 → 実績状態初出
MY-2013-001災害公営住宅(市事業分)宮古市長2013〜2015年度・434戸 → 市整備417戸が2016年度完了履行済2013年5月27日・市議会
MY-2013-002鍬ヶ崎地区海岸防潮堤岩手県(市議会での市部長答弁)2016年度末 → 2019年9月完成履行済2013年12月11日・市議会
MY-2013-003田老漁港海岸 第一線堤岩手県(市議会での市長答弁)2015年3月 → 2021年3月完成履行済2013年9月17日・市議会
MY-2014-001田老・鍬ヶ崎光岸地の土地区画整理宮古市長2015年度内 → 田老2016年3月、鍬ヶ崎2018年3月履行済2014年2月17日・市議会
MY-2015-001津軽石保育所・田老保育所・田老診療所宮古市長2015年度 → 未確認確認不能2015年2月16日・市議会
MY-2015-002新里小学校の施設改修宮古市教育長2015年度内 → 未確認確認不能2015年10月5日・市議会
MY-2016-001災害公営住宅 25団地766戸宮古市2016年度中 → 2017年1月完成履行済復興状況2016年3月版
MY-2016-002宮古保健センターの本復旧宮古市2018年度 → 未確認確認不能復興状況2016年3月版
MY-2016-003田老診療所の本復旧宮古市2016年8月 → 未確認確認不能復興状況2016年3月版
MY-2016-004被災した消防屯所の復旧宮古市2016年度 → 未確認確認不能復興状況2016年3月版
MY-2016-005震災記録誌 第2巻の刊行宮古市2016年度 → 2017年発行履行済復興状況2016年3月版
MY-2016-006閉伊川水門(事業費約295億円)岩手県(市議会での市長答弁)2020年度末 → 2026年度内完成予定・未完成期限超過2016年6月14日・市議会
MY-2018-001防潮堤・水門・防潮林のすべて宮古市2020年度 → 閉伊川水門のみ2026年度へ期限超過復興状況2018年3月版
MY-2018-002JR山田線の三陸鉄道への移管開業宮古市・岩手県・沿線市町村2019年3月 → 2019年3月23日開業履行済2018年3月7日・市議会
MY-2012-001復興推進計画の毎年度のローリング宮古市毎年度 → 未確認確認不能復興推進計画・2012年3月30日
MY-2020-001鍬ヶ崎・光岸地地区の未完了の公園整備宮古市2020年度 → 未確認確認不能復興状況2020年3月版

欠番になった一号――宮古市の15年を、公開資料だけで読むの解説に添えた絵。記事の内容を表す作り絵で、実在の場所や人を撮影した写真ではありません

確認不能が7件ある。これは「守られなかった」という意味ではない。確認した公開資料の範囲で、実績を書いた文書を見つけられなかったという意味である。理由の多くは節3で書いたことに戻る——年次の進捗をまとめた冊子が2020年3月版で終わっているため、2020年度以降に完了したものを、市の資料だけで追う経路が細い。

各行の原文引用・出典URL・確認済み範囲・更新条件は、13列の台帳(reports/宣言1_15年読破/miyako/約束台帳_miyako.tsv)に全件そろえてある。この記事は、その台帳の表側である。

追跡できた約束16件の、いまの状態 低い作業灯に照らされた作業場の壁で、三本の横木に工事の完了予定を書いた木の札が掛かっており、履行済・期限超過・確認不能の順に下へ並ぶ。いちばん下の横木の札がいちばん多いことと、右端に札の掛かっていない空の釘があることを読み分ける図。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 追跡できた約束16件の、いまの状態 履行済 7件 災害公営住宅766戸 鍬ヶ崎の防潮堤 田老の第一線堤 田老・鍬ヶ崎の区画整理 記録誌 第2巻 山田線の移管 災害公営住宅(市事業分) 期限超過 2件 閉伊川水門 防潮堤・水門・防潮林のすべて 確認不能 7件 保育所と診療所 新里小学校の改修 宮古保健センター 田老診療所 消防屯所 計画の毎年度の見直し 鍬ヶ崎の公園整備 期限内進行中0件 期限なし・継続中0件 変更・中止0件 確認不能=守られなかった、ではない 確認した公開資料の範囲で、実績を書いた文書を見つけられなかった、という意味 年次の進捗をまとめた冊子は2020年3月版が最後 期限を過ぎてから完了したものも履行済に数えている 基準日 2026年8月17日
約束の札を掛けた棚|低い作業灯に照らされた壁の棚に、工事の完了予定と実績を書いた木の札が掛かっており、履行済・期限超過・確認不能の三つの列に分かれている。どの列に何枚あるかと、確認不能の列がいちばん長いことを読み分ける図

残っていない記録の地図

宮古市は、記録が薄い市ではない。会議録は1998年から連続して読めるし、震災当日の本会議も読める。だからこの節の主題は「無い」より「どこに置いてあるか」になる。

① 探した範囲

  • 宮古市公式サイト(www.city.miyako.iwate.jp)の全体を機械で巡回し、18,697件を目録にした。内訳はHTMLページ7,163件・添付ファイル11,534件で、HTTP 200が18,690件、4xx・5xxが7件、通信エラーが0件。robots.txt は基準日時点で存在しない(/robots.txt は「ご指定のページは見つかりませんでした」を返す)ため、こちらの判断で /theme/ /reiki/ /kana/ /mobile/ /cgi-bin/ /e-shinsei/ を除外した。巡回は待ち行列が空になるまで走らせた(打ち切っていない)。
  • 目録のうち年が特定できたのは12,097件で、そのうち2010〜2026年が11,878件。年の手がかりがどこにも無い行が6,600件(35%)ある。表題にも親ページにも更新日にも年が書かれていないPDFがこれだけあり、時系列に並べられない。
  • 広報みやこの号数は、現行サイトの年度ページ全部と、国立国会図書館WARPの2022年7月5日採取分(2007〜2016年度)の両方から拾って突き合わせた。
  • 議会会議録は検索システムの会議一覧を年度で数えた。
  • 決算・監査・計画・記録誌は、市の該当ページを開いて掲載年度を目で数えた。
  • 会計検査院は公式データベースを2010〜2024年度で「宮古市」全文検索した。

② 無いもの一覧

「無い」の状態は6つに分ける。未作成/存在するが非公開/旧URL消失/保存状況不明/探索範囲で未確認/機械には非公開(人は読める)

資料の種類期間状態探した範囲
歳入歳出決算書・実績報告書2011〜2015年度探索範囲で未確認市の「決算の概要」ページ全文
決算等審査意見書2010〜2019年度探索範囲で未確認市の「決算等審査意見書」ページ全文
定期監査・例月出納検査の個別結果全期間存在するが非公開市の監査・コンプライアンスのカテゴリ(制度の説明のみ・結果0件)
住民監査請求の個別結果全期間存在するが非公開同上(市の説明では掲示場等で公表)
広報みやこ2007〜2016年度旧URL消失(市が国立国会図書館WARPへリンク)市のバックナンバーページ
広報みやこ No.4232023年4月ごろ探索範囲で未確認市の全年度バックナンバーページ
委員会会議録2017年度以前探索範囲で未確認市の委員会会議録一覧(2018年度以降のみ)
会議録の本文全期間機械には非公開(人は読める)検索システムのrobots.txt(本文取得の口は許可の外)
震災記録誌 第1巻《津波史編》本編663ページ2014年存在するが非公開(冊子で頒布)市の記録誌ページ(オンラインは概要版のみ)
復興状況パンフレット2020年度以降探索範囲で未確認市の復興関連ページ
復興計画の改定版(第○次改定)全期間探索範囲で未確認市の復興計画ページ・サイト内検索
旧田老町・旧新里村の広報紙2006年度以前保存状況不明市の広報バックナンバーページ(広報かわい3年度分のみ掲載)
かさ上げ地の年次の利活用率全期間探索範囲で未確認市の復興資料・土地公募ページ・復興庁の集計

いずれも「確認した公開ページの範囲で見つからなかった」であって、原本が現存しないという意味ではない。

③ 背景事情(因果ではなく、確認できた事情だけ)

  • 市のサイトは、旧サイト(/kikaku/ などの階層)から現行の階層へ入れ替わっている。広報のWARPリンクが旧階層を指していることから、その入れ替わりが確認できる。CMSの入れ替えはどこの役場にもある運用である。
  • 市は3回に分けて今の形になった(2005年6月6日の合併、2010年1月1日の編入)。合併前の団体が出した資料は、そもそも別の団体のサイトにあったものである。
  • 議会の委員会会議録は、本会議の検索システムとは別のPDFの棚に置かれている。仕組みが2つある。
  • 監査結果を市の説明どおり掲示場等で公表している場合、Webに一覧が無いのは公表していないことと同じではない。

④ 誰の何が「市の公開資料では」読めないか

  • 2011〜2015年度に、どの事業へいくら使ったかは、市の公開資料では読めない。この5年度の普通会計歳入は合計3,963億円で、15年で最大の年(2012年度の1,052億円)を含む。総額と財政指標は財政状況資料集で読めるが、事業ごとの内訳を書いた実績報告書が2016年度からしか置かれていない。
  • 震災の年の広報は、市の公開資料では読めない。 国立国会図書館の保管庫でなら読める。
  • 2019年度以前に監査委員が決算をどう見たかは、市の公開資料では読めない。
  • 旧田老町・旧新里村が、合併前に町民へ何を知らせていたかは、市の公開資料では読めない。
  • 津波の歴史を663ページにまとめた記録誌の本編は、市の公開資料(オンライン)では読めない。冊子は配布されている。

⑤ 市の外に残っている記録

  • 国立国会図書館WARP: 広報みやこ2007〜2016年度、市トップページの2011〜2015年の62版。
  • 岩手県: 県管理の水門・防潮堤の進捗表(宮古市関連14か所)、復興実施計画と年次報告、復興ウォッチャー調査(2012〜2026年・32回)。県が事業主体の施設の完成年は、市の資料より県の進捗表のほうが具体的である。
  • 復興庁: 移転元地の状況調査(宮古市の行が毎年ある)、復興交付金の資料。
  • 会計検査院: 被災自治体を横に並べた表の中に、宮古市の事業量が数字で残っている(入札不調4件・2億9,800万円、防災集団移転の宅地28区画のうち未契約6・空き3など)。
  • 鉄道事業者: 山田線宮古〜釜石間の移管条件を書いた基本合意資料。
  • 岩手県立図書館: 宮古市および旧自治体の行政資料・地域資料の目録。
  • 学術データベース: 田老地区の仮設店舗、中心商業地の被害と復興、住民主体のコミュニティ再生などの論文がJ-STAGE・CiNiiにある。

⑥ まだ取り戻せるか

「取り戻す作業をやります」という約束ではない。この手段が残っている、というところまでの記載である。

読めないもの残っている手段見込み
2011〜2015年度の決算書・実績報告書情報公開請求/市議会図書室/県立図書館の行政資料未確認
2010〜2019年度の決算審査意見書情報公開請求未確認
定期監査・例月出納検査の結果情報公開請求/掲示場での公表分の閲覧未確認
広報みやこ No.423市への照会/紙の綴じ込み未確認
旧田老町・旧新里村の広報紙県立図書館・国立国会図書館の郷土資料/WARPの旧町村サイト未確認
記録誌 第1巻本編663ページ図書館での閲覧(冊子は配布済み)できる
2020年度以降の復興の進捗岩手県の進捗表/復興庁の年次調査できる
棚にある年度と、無い年度 低い光の差す役所の書庫で、年度の背ラベルが並ぶ棚のいくつかの区画が空いており、廊下の先の別の建物へ運ばれた箱に宛名の札が貼ってある。棚にあるもの、外の保管庫にあるもの、行き先の札も無いものを読み分ける図。 SANRIKU HAPPINESS / PUBLIC DATA 棚にある年度と、無い年度 決算書・実績報告書 2016〜2024年度 9年度分 財政状況資料集 2010〜2024年度 15年度分 決算等審査意見書 2020〜2024年度 5年度分 議会会議録 1998年〜 本会議 2011〜2025年度=135回 広報みやこ 2017年度〜 現行サイト 決算書・実績報告書 2011〜2015年度 決算等審査意見書 2010〜2019年度 定期監査・ 例月出納検査の 結果 0件 委員会会議録 2017年度以前 広報みやこ No.423 震災記録誌 第1巻《津波史編》 本編663ページ 冊子のみ・オンラインは概要版 国立国会図書館 インターネット 資料収集保存事業 (WARP) 広報みやこ 2007〜2016年度 市のトップページ 2011〜2015年 62版 市のバックナンバー ページが、この箱へ リンクを張っている 「『無い』は『確認した市の公開ページの範囲で 見つからなかった』という意味」 紙で現存するかどうかは、別の問題 基準日 2026年8月17日
隣の建物へ預けた箱|低い光の差す役所の書庫で、年度の背ラベルが並ぶ棚のいくつかの区画が空いており、廊下の先の別の建物へ運ばれた箱に宛名の札が貼ってある。棚にあるもの、外の保管庫にあるもの、行き先の札も無いものを読み分ける図

まだ読めていないもの

この記事で「読み切った」と言えるのは、どこに何があるかまでである。中身まで読んだものはほとんど無い。正直に分母と読了数を並べる。

母集団「全部」の定義分母読了達成率
議会会議録Web公開の全定例会・臨時会(2011〜2025年度)135回4回3.0%
復興計画・総合計画本編+改定版の全版46冊8冊17.4%
予算・決算資料各年度の概要書(2010〜2025年度)16年度0年度0%
監査・検査監査委員の公表分7本+会計検査院の当該市記載16報告23件2件8.7%
広報紙震災月(2011年3月)以降の全号(PDF公開分)366号+特別号6種0号0%
検証・記録誌市発行の震災検証・記録誌の全冊6点0冊0%
サイト在庫目録全ページ・全添付の機械巡回11100%

「読了」は中身を開いて読んだものの数である。目録の「取得済」はURLが応答したという意味であって、読んだという意味ではない。

したがって、この記事の時点では「宮古市の15年を全部読みました」とは書けない。書けるのは「公開されている範囲で、在り処を数えました」までである。ここから先は、読んだ分だけこの記事を版を上げて書き足していく。

そのほか、この記事で調べた範囲では裏が取れなかったものを列挙する。

  • 田老漁港海岸の完成年月
  • 閉伊川水門の完成(2026年度完成見込みまでは確認)
  • かさ上げ地の年次の利活用率
  • 三陸鉄道への移管に伴う宮古市単独の負担額
  • 宮古〜室蘭フェリーに市が支出した額
  • 復興事業に使った総額(復興交付金以外を含む単一の公式総額)
  • 2010〜2014年度の東日本大震災復興基金の残高
  • 住民監査請求・住民訴訟の件数

出典一覧

1. 広報みやこ

2. 人口

3. 計画

4. 会議録

5. お金と検査

6. 記録・アーカイブ


版と訂正履歴・連絡窓口

  • : 第1版(2026年8月17日)
  • 訂正履歴: 2026年8月24日——「避難所への情報提供」の出典リンク2箇所が市サイトから削除されており開けなくなっていたため、国立国会図書館WARPの保存版へ張り替えた。
  • 連絡窓口: 記載の誤り、新しい一次資料の所在についてのご連絡は、このサイトのお問い合わせからお願いします。指摘をいただいた行は書き換え、この欄に日付と内容を残します。

まとめ

この記事で書けるのは、公開されている範囲で在り処を数え、確認できた約束と記録を並べたところまでである。読み切ったとは書かず、読んだ分だけ版を上げて書き足していく。

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