夕暮れの窓辺の机に、開いた大学ノートと電卓と老眼鏡が置かれている。窓の外は海に向かう広い道路と、建ち並ぶ低い建物。ノートには太いペンで、わが街の現在地 陸前高田市、2026年8月版、基金 147.90億円、借金 119.81億円、出生 57人、死亡 368人、と手書きされている。画面下の白い帯に 三陸ハピネス 石田祐太 2026年8月。実際の陸前高田市を撮影した写真ではなく、記事の内容を表す作り絵です。

「生活が苦しい」を市の借金だけで説明するのは誤りでした。総基金147.90億円は地方債119.81億円を上回ります。問題の芯は借金額ではなく、細る税源と利用者で復興後の施設・道路・上下水道を維持する構造にあります。

わが街の現在地・陸前高田市(2026年8月版)

まちの現在地レポート 第1号 | 無料 2026年8月 / 石田 祐太(三陸ハピネス) 同じ様式の資料を、全国どの市町村ぶんでもお作りします

このまちの現在地を一枚で(数字は本文と同じ・出典は下の本文にあります)
出生57人 / 死亡368人2025年の1年間
基金147.90億円 > 借金119.81億円令和6年度末
46.8%下水道料金で回収できた処理費
現在地問題は借金の額ではなく、人が減っても同じ速さでは減らない維持費のほう

この資料の立場(必ずお読みください) この資料は、市民の一人である石田祐太が、市や県・国が公開している資料だけを根拠に、個人として自主的に作成し公開しているものです。

  • 作成にあたり、議員・市議会・市役所からの依頼、監修、承認、推薦は受けていません。文責はすべて石田祐太にあります。
  • 議員・職員の氏名は出していません。 人や組織を点数・順位で評価するものでもありません。
  • 特定の候補者への投票、支持、反対、当選または落選を求めるものではありません。
  • 数字はすべて出典元の公表値です。基準日や集計期間が資料ごとに違う箇所は、その旨を本文に書いています。
  • 石田祐太が書いた文章・図表は、断りなく、加工してお使いいただけます(引用元の資料は各発行者の定めに従ってください)。
  • 誤りや権利上の問題にお気づきの際はご連絡ください。確認のうえ訂正または取り下げます。

1. 結論(先に答え)

「生活が苦しい」を市の借金だけで説明するのは誤り。陸前高田市の地方債残高119.81億円は総基金147.90億円を下回り、将来負担比率も算式上は「-」である。ただし総基金の全額を自由に使えるわけではない。一方、財政力指数0.32、実質公債費比率11.6%、高齢化率42.1%、2025年の出生57人・死亡368人で、問題の芯は「細る税源と利用者で、復興後の施設・道路・上下水道を維持する構造」にある。

2. 財政:令和6年度決算

指標陸前高田全国市町村岩手33市町村読み方
財政力指数0.320.490.371に近いほど自主財源が強い
経常収支比率92.1%93.8%93.3%低いほど新規施策の余地が大きい
実質公債費比率11.6%5.6%10.1%借金返済負担。陸前高田は全国の約2.1倍
将来負担比率6.2%27.4%「-」は分子が負。負担ゼロの意味ではない

出典:陸前高田と岩手33市町村の単純平均は岩手県の令和6年度確報、全国3指標は沖縄県が掲載した全国市町村平均、全国の将来負担比率は新潟県が掲載した全国最終値。全国値は出典資料記載値で、算出法と総務省一次ページは未取得。

残高・収支実数補足
総基金残高147.90億円財政調整基金62.31億円、減債基金19.65億円、その他特定目的基金65.94億円。全額が自由財源ではない
地方債残高119.81億円基金が地方債を28.10億円上回る
基金/住民1人約85.9万円2025年1月1日人口17,226人による独自計算
地方債/住民1人約69.6万円同上の独自計算
総基金の減少▲16.08億円・▲9.8%令和4年度163.98億円から令和6年度147.90億円へ
標準財政規模71.05億円自治体の標準的な一般財源規模

出典:陸前高田市・令和6年度財政状況資料集。将来負担比率の分子は▲97.59億円であり、「-」表示を安全宣言に使ってはならない。

図1 貯金と借金、どちらが多いか(令和6年度末・億円)
総基金147.90
地方債残高119.81
うち財政調整基金62.31

基金が地方債を28.10億円上回っています。ただし総基金の全額を自由に使えるわけではなく、使いみちの決まっていない財政調整基金は62.31億円です。総基金は令和4年度の163.98億円から2年で16.08億円減りました(出典は本文)。

近隣6自治体の財政

自治体財政力経常収支実質公債費将来負担基金地方債
陸前高田市0.3292.1%11.6%147.90億円119.81億円
大船渡市0.4495.8%13.3%76.3%95.78億円224.16億円
気仙沼市0.45102.2%8.1%337.11億円292.48億円
釜石市0.4999.0%10.2%110.39億円188.49億円
住田町0.2281.2%6.6%61.29億円47.45億円
宮古市0.3694.9%10.4%10.5%132.91億円428.16億円

出典:岩手5自治体は岩手県・令和6年度財政状況資料集、気仙沼市は宮城県・決算カード。基金・地方債の絶対額は人口規模が違うため、大小だけで優劣を決めない。

3. 人口動態

図2 生まれた人と、亡くなった人(2025年の1年間)

生まれた

57人

小学校1学年ぶんにも届きません

亡くなった

368人

生まれた人のおよそ6.5倍です

差し引き311人の自然減。転出入による113人の減と合わせて1年で424人減り、自然減だけで減少の73.3%を占めます。人が減っても、道路・水道・施設の量は同じ速さでは減りません(出典は本文)。

最新の現在地(直近値を優先するため基準日・期間は異なる)

指標実数基準日・期間出典
住基人口16,532人2026年7月31日市・人口世帯数
高齢化率42.1%2026年1月1日e-Stat年齢別住基人口
出生/死亡57人/368人2025年中e-Stat人口動態
自然増減▲311人2025年中同上
社会増減▲113人2025年中同上
総増減▲424人2025年中同上

市統計書で追う推移

年度出生死亡自然増減転入転出社会増減
令和286323▲237415457▲42
令和378366▲288464296+168
令和464361▲297416464▲48
令和561364▲303397461▲64
令和649373▲324322498▲176

出典:陸前高田市統計書・人口動態。年度値と暦年値は別系列なので混ぜない。出生は令和4年度64人から令和6年度49人へ23.4%減った(独自計算)。

東北6県と近隣の高齢化

地域65歳以上比率地域65歳以上比率
全国29.0%陸前高田市42.1%
青森県35.9%宮古市40.7%
岩手県35.6%大船渡市40.4%
宮城県29.9%気仙沼市41.8%
秋田県39.8%釜石市41.1%
山形県35.8%住田町48.6%
福島県33.8%

出典:e-Stat・2026年1月1日年齢別住民基本台帳人口。同じ表から65歳以上を合計して算出。東北6県の「市町村財政6指標の統一平均」は未取得であり、県一般会計を代用しない。

4. 暮らし

分野実数何が見えるか出典
医療病院2、病床213、一般診療所6、歯科7、医師13.6人高齢化42.1%に対し供給の絶対規模が小さい。医師13.6は統計上の合算値市統計書・医療(令和5年)
小学校8校、632人平成24年1,002人から370人、36.9%減市統計書・教育(令和5年)
中学校2校、358人平成24年6校・591人から学校数3分の1、生徒39.4%減同上
大船渡職安管内の雇用有効求人倍率0.78倍2026年5月。岩手1.11、全国1.17を下回る。陸前高田市単独値は未取得岩手労働局
所得1人当たり市町村民所得251.1万円岩手市町村計282.4万円の88.9%。個人年収ではなく企業所得等を含む岩手県・令和5年度市町村民経済計算
上水道普及率94.5%、有収率69.9%配水の30.1%が料金収入につながらない市統計書・上下水道(令和5年度)
下水道汚水処理人口12,482人、水洗化人口12,083人人口減でも管路・処理場の固定費は残る同上
道路市道617.290km、改良率54.3%、舗装率57.9%未改良・未舗装部分を残しつつ維持更新期へ入る市統計書・令和7年版
公共建築物157施設・471棟、延床196,817.25m²2022年3月31日時点。公営住宅が床面積の31.4%、学校教育系が29.3%市・公共施設等総合管理計画

上下水道料金

  • 市の早見表は一般家庭20m³を水道3,905円、下水道3,410円、計7,315円/月と掲載する。市・上下水道料金早見表
  • 早見表が水道メーター使用料を含むかはページ上で確認できず、20m³の実請求額は不明。
  • 2026年3月検針分から2027年3月検針分は、水道基本料金を税抜500円、税込550円減免する。市・物価高騰対策
  • 令和6年度の下水道使用料単価188.47円/m³に対し汚水処理原価402.47円/m³、経費回収率46.8%。料金で賄えたのは半分未満。市・下水道事業決算審査
図3 下水道は、かかったお金の半分も料金で戻っていない(令和6年度・円/m³)
汚水処理原価402.47
使用料単価188.47

1立方メートルを処理するのに402.47円かかり、料金として受け取れたのは188.47円。経費回収率46.8%で、残りは市の別のお金で埋めています。使う人が減っても管路と処理場の固定費は残ります(出典は本文)。

近隣の所得比較

地域1人当たり市町村民所得
岩手市町村計282.4万円
沿岸広域圏255.6万円
宮古市255.1万円
大船渡市265.4万円
陸前高田市251.1万円
釜石市272.6万円
住田町268.8万円

出典:岩手県・令和5年度市町村民経済計算。気仙沼市は県境をまたぐ同定義・同年度値を未取得。

5. 復興資産と今後10年

構造変化実数・推計判定
将来人口市の政策シナリオは2025年16,478人→2035年13,577人、10年で▲2,901人・▲17.6%推計。実績ではない
社人研推計2020年18,262人→2035年13,513人→2050年9,617人推計。政策シナリオよりわずかに厳しい
一般財源等地方交付税等60.31億円(令和7)→57.13億円(令和9)、▲3.18億円・▲5.3%市の3年見通し。復興特別交付税の減を明記
財政調整基金47.69億円(令和7末)→43.69億円(令和9末)、▲4.00億円・▲8.4%市の3年見通し
公共施設更新建物40年551億円、年平均13.8億円。道路・橋・上下水道等40年670億円、年平均16.7億円。両者の単純合計は年平均30.5億円計画上の試算。災害公営住宅等の一部除外あり
更新時期震災後に整備した建物の大規模改修が令和17~24年度に集中計画上の見通し。10年後から山場
かさ上げ地高田・今泉地区106.6haのうち利用済み・予定59.6ha、55.9%2026年3月31日現在。残り44.1%は空き地・収益化可能地と同義ではなく、調整中・条件付き・公共利用等の内訳は不明
水道料金収入令和5年度3.383億円→令和17年度3.085億円、▲0.298億円経営戦略上の推計。利用者減と固定網維持が衝突

出典:人口政策シナリオは市・第3期総合戦略、社人研は地域別将来推計人口・結果表Excel、交付税・基金は市・令和7年度財政見通し、更新費は市・公共施設等総合管理計画、土地は市・土地利活用状況、水道収入は市・水道事業経営戦略

10年構造の言い切り

  1. 人口は約17.6%減る政策シナリオなのに、道路、管路、処理場、復興施設の物理量は同率では減らない。
  2. 令和9年度まででも復興特別交付税の減と扶助費・公債費の増が同時に来る。10年分の一般会計収支表は未取得で、不明。
  3. 公共施設更新費2区分の単純合計年平均30.5億円は標準財政規模71.05億円の約43%に相当する規模。これは更新需要の大きさを示す参考比較で、毎年度の一般会計支出ではない。 40年平均かつ企業会計分を含む。
  4. 将来負担比率「-」と基金の厚さは時間を買うが、基金はすでに減少中。問題の先送り可能年数は不明。
  5. 土地55.9%の利活用を収益・雇用・定住へ変えられなければ、復興資産は価値より維持費が先に見える。

6. 市民が一番驚く事実トップ5

  1. 2025年は出生57人に対し死亡368人。 自然減311人だけで総減424人の73.3%を占める。e-Stat「2026年1月1日住基人口・2025年人口動態(市区町村別・総計)」
  2. 2035年人口は13,577人。 市の政策シナリオ内の2025年16,478人比で17.6%減る。市・第3期総合戦略
  3. 総基金147.90億円は地方債119.81億円より多いが、自由度の高い財政調整基金は62.31億円。 総基金は2年で16.08億円減り、実質公債費比率11.6%は全国5.6%の約2.1倍。市・財政資料
  4. 下水道料金で回収できた処理費は46.8%。 使用料単価188.47円/m³に対し原価402.47円/m³。市・下水道事業決算審査
  5. 公共資産の更新試算2区分の単純合計は年平均30.5億円。 一般会計の毎年支出額ではないが、復興後建物の大規模改修は2035~2042年度に集中する。市・公共施設等総合管理計画

7. 分からなかったこと(未取得・不明)

  1. 東北6県の令和6年度「市町村平均」財政6指標:未取得。県一般会計との混同を避けた。
  2. 陸前高田市一般会計の10年間収支表:未取得。公表確認できたのは令和7~9年度の3年見通し。
  3. 復興施設ごとの年間維持費・稼働率:未取得。総合管理計画の全体更新試算のみ取得。
  4. かさ上げ地の「完全な未利用面積」:不明。取得値は利用済み・予定面積であり、残余を空き地と断定しない。
  5. 上下水道20m³の実請求額:メーター使用料を早見表7,315円が含むか確認できず不明。早見表掲載額自体は確認済み。

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